結論は、労災の診療費は、診療費請求書と内訳書を、都道府県労働局へ出すこと。電子で出すなら、前月診療分を毎月10日までに。
診療費請求書の様式は、診機様式第1号です。紙で出す病院は、期限を労働局に確認してください。
今やること勤務先が労災の請求を、電子で出しているか、紙で出しているか。請求の担当者に、ひとつだけ聞いてみる。
▼ 請求の流れを見る
労災のレセプト請求は、この順で進みます
実務の順番で並べると、次の6つです。
出典:厚生労働省「労災レセプト電算処理システム よくあるご質問」令和8年4月30日最終更新 ほか。確認は2026年10月5日
ひとつずつ見ていきます。
1 初診の日に、患者さんから請求書を預かる
労災の患者さんが指定医療機関にかかる時は、「療養の給付請求書」が要ります。仕事中のケガなら様式第5号、通勤中なら様式第16号の3。
厚生労働省のリーフレットによると、この請求書は療養を受けている指定医療機関を経由して、所轄の労働基準監督署長に出すもの。
病院が預かって、あとで送る流れです。
請求書には、勤務先の事業主の証明が要ります。ただ、証明がもらえなくても、請求はできる。厚生労働省のリーフレットの記載です。
出典:厚生労働省リーフレット「療養補償等給付の請求手続」
窓口での声かけは、たとえばこうです。
「勤務先の証明が取れない時も、請求はできます。労働基準監督署に相談できますので、お伝えしますね」
受付で労災か健康保険かを見分ける所は、別の記事で書きました。
2 診療費は、労災の算定基準で計算する
労災は、健康保険と同じ点数表ではありません。単価が違います。
令和8年6月版の労災診療費算定マニュアルには、こうあります。
診療単価は、12円とします。ただし、以下に係るものについては、11円50銭とします。(円未満の端数切り捨て)
(1)国及び法人税法(昭和40年3月31日法律第34号)第2条第5号に規定する公共法人
(2)法人税法第2条第6号に規定する公益法人等であって、法人税法施行令(昭和40年3月31日政令第97号)第5条第29号に掲げる医療保健業を行うもの
出典:厚生労働省「労災診療費算定マニュアル」令和8年6月版 PDF p.4
12円が基本で、国や公共法人、公益法人等の医療保健業は11円50銭です。自分の病院がどちらかは、上司に聞けばすぐ分かりますよ。
健康保険は1点10円。同じ点数でも、金額は労災のほうが高くなります。
3 前月分がそろったら、診療費請求書と内訳書を作る
請求書の名前は「労働者災害補償保険診療費請求書」で、様式は診機様式第1号。内訳書は、入院用が第2号、入院外用が第3号です。
傷病の年金を受けている患者さんは、入院用が第4号、入院外用が第5号。
薬剤費だけは別の様式で、指薬機様式第1号から第3号を使います。
4 翌月10日までに、都道府県労働局へ出す
出し先は、労働基準監督署ではなく、都道府県労働局。電子請求の出し先は、FAQで確認しました。紙の出し先も、労働局の資料には同じ記載があります。
ただし古い資料です。
期限は、次の章で電子と紙に分けて説明します。
5 初回分の請求書は、電子請求でも紙のまま
電子で請求している病院でも、様式第5号などの用紙は紙のまま。FAQでは、被災労働者が所属する事業場を管轄する労働基準監督署ごとにまとめて、都道府県労働局へ送るよう案内しています。
初診の日に預かった請求書は、なくさずに取っておきたい用紙ですね。
6 返戻や月遅れは、あとから対応する
返戻と時効は、このあとの章で説明します。
提出期限は、電子と紙で見る資料が違います
電子で請求する時
労災レセプト電算処理システムのFAQに、期日が載っています。
オンラインによる請求は、下記の期日に行うことができます。
①毎月5日~7日、11日~12日(土日祝日を含む)8:00~21:00
②毎月8日~10日(土日祝日を含む)8:00~24:00
※毎月11日~12日は、データに不備があり、10日までに請求できなかった件数分のみ修正の上、請求することができます。
※毎月1日から4日は、システム停止のため、労災レセプト電算処理システムを利用することはできません。
なお、電子媒体による請求の場合には、毎月10日までに管轄の都道府県労働局に提出してください。
出典:厚生労働省「労災レセプト電算処理システム よくあるご質問」令和8年4月30日最終更新 p.63 4-1 Q1
オンラインは5日から。1日から4日は、システムが止まっています。
10日までに出せなかった分は、11日と12日に、エラー分だけ直して請求できますよ。
光ディスクなどの電子媒体は、毎月10日までに労働局へ提出。
紙で請求する時
紙の期限は、診療月の翌月10日まで。岡山労働局と青森労働局の資料に、そう載っています。
ただ、どちらも作成年が分かりません。令和8年時点の資料は、見つけられませんでした。紙で出している病院は、管轄の労働局に確認を。
10日が休日の時は、FAQにこうあります。
また、10日が閉庁日にあたる場合の提出締切日については、管轄の都道府県労働局にお問い合わせください。
出典:同FAQ p.32 Q6
オンラインが使えず、一時的に紙で出す場合の受付は、平日の開庁時間だけ。郵送でも同じです。
電子請求の仕組みと、5点の加算
電子での請求は、義務ではありません。FAQにも、義務化ではない、とはっきり書いてあります。
始めるには、労働局への届出が要ります。ID・パスワードは、届出から1〜2週間ほど。健康保険のIDやパスワードは使えず、労災用が別に要ります。
電子証明書は、健康保険のものを流用できます。
電子で出すと、労災電子化加算が1件につき5点。令和10年3月診療分までの予定です。薬剤費のレセプトは対象外で、医科・歯科のみ。
令和8年6月の改正で、変わったところ
令和8年6月1日以降の診療から、算定基準が変わりました。厚生労働省の周知用資料から、主な点を金額で並べます。
- 再診料:1,420円から1,430円
- 療養の給付請求書取扱料:2,000円から2,200円
- 入院時食事療養費の1:830円から880円
- 60歳以上の方の職場復帰支援・療養指導料に、150点の加算
- 労災電子化加算の措置期間:令和10年3月診療分まで延長
出典:厚生労働省「令和8年改定 周知用資料」
ここは要注意。取扱料は、新設ではなく、2,000円から2,200円への引き上げです。二次情報には「新設」と書いたものもありますが、厚生労働省の資料は「引き上げ」でした。
取扱料を算定するのは、様式第5号と第16号の3を取り扱った時。転医先で出す様式第6号・第16号の4では、算定できません。
返戻・月遅れ・時効
返戻は、紙で返ってきます
電子で請求していても、返戻は紙で返ってくることがあります。返戻レセプトの電子レセプトには対応していない、とFAQにあるためです。直したものは、紙で再請求。
月遅れは、オンラインでも請求できます
未請求のものなら、月遅れのレセプトもオンラインで請求できます。ただし、時効が来ていない分だけ。
時効は、病院の請求は5年です
労災保険指定医療機関等の診療報酬請求権は、民法第166条により、原則として診療月の翌月の初日から起算して5年間で消滅時効が完成します。
出典:同FAQ p.28 Q4
療養期間から請求を受け付ける月までは、5年1か月以内。超えたレセプトは、「3103 請求権消滅時効のレセプトです。」というエラーが出ます。
「労災の時効は2年」と聞いたことがあるかもしれません。それは、患者さん本人が非指定の医療機関で受けた時の「療養の費用」の請求。病院の診療費請求は5年です。混ぜないでくださいね。
業務災害と通勤災害で、違うところ
出典:厚生労働省リーフレット「療養補償等給付の請求手続」/労働者災害補償保険法 第22条の2第3項・第31条第2項
通勤災害の一部負担金は、条文では、最初の休業給付から控除する形です。病院の窓口で200円を取るかどうかは、確認できていません。院内の決まりを聞いてみてください。
電子請求は、通勤災害も同じ。FAQには、レセプトコンピューターで入力できる帳票なら、通勤災害も請求できると書いてあります。
健康保険のレセプトと、違うところ
出典:労災診療費算定マニュアル令和8年6月版、リーフレット「療養補償等給付の請求手続」、労災レセプト電算処理システムFAQ
健康保険の欄は、全体の違いをつかむための目安です。請求の期限、様式、窓口負担の細かい扱いは、この記事では確認していません。
よくある質問(FAQ)
Q. 勤務先が、事業主の証明を書いてくれない場合は?
できます。厚生労働省のリーフレットに、事業主の証明が得られなくても請求できる、と載っています。患者さんには、労働基準監督署か労働局への相談を案内する形です。
Q. 初診の日に、請求書が間に合わない場合は?
療養担当規程では、緊急やむを得ない理由で請求書が出せず、資格があることが明らかな時は、診察してよいことになっています。そのあと、遅れずに請求書を出してもらう形です。
この規程は、平成25年改正の資料で見ました。実際の扱いは、院内の決まりを聞いてみてください。
Q. 初回の請求書が出てこないまま、2回目以降の請求を出すと?
青森労働局の資料は、初回分の請求がないと、2回目以降があっても支払いが保留される、としています。作成年が古い資料です。今の取り扱いは、管轄の労働局で確認を。
Q. 公務員の災害は、電子で請求できますか?
できません。公務員の災害は、労災レセプト電算処理では請求できないとFAQにあります。
Q. 健康保険で受け付けてしまった後は、どうなりますか?
健康保険で出したレセプトの扱いは、院内の決まりを請求の担当者に聞いてください。この記事では、取り下げや出し直しの手順までは確認していません。
切り替えの流れは、労災か健康保険かを受付で確認する記事で書きました。
労災の点数と、レセプトの点検で迷った項目は、労災算定ナビで原文を見ながら確認できます。
月初に迷わないために
- 出し先は、都道府県労働局:診療費請求書と内訳書を、電子なら前月分を毎月10日までに
- 1点は12円:非課税の医療機関は11円50銭。令和8年6月版のマニュアルも、この金額
- 病院の請求権の時効は5年:2年は、患者さん本人の請求の期限
まずは、勤務先が労災を電子で出しているか、紙で出しているか。請求の担当者に、聞いてみるところから始めましょう。
資格確認やレセプトの基本は、無料の受付で固まらない制度早見表PDFにもまとめています。
参考にした資料
確認日は、すべて2026年10月5日です。
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■ 著者プロフィール3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1つで元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。
最終更新日:2026年10月5日