「え、これなんで返戻…?」

事由の欄に一行だけ書いてある。読んでも、次に何をすればいいか分からない。
月初のいちばん忙しい時間に、その一枚が手元に残ります。

返戻は、直し方が事由ごとに違うもの。
資格の話なら数分で終わります。診療内容の話だと、先生への確認が要る。
最初にどちらかを見分けるだけで、その日の動きが決まりますよ。

この記事でわかること
- 返戻と査定の見分け方(届く帳票が違います)
- 返戻事由コードの頭の数字で分かれる2つの世界
- 資格・記載・診療内容、それぞれの事由別の直し方
- 診療報酬早見表で原因まで追う手順
- 医師への確認と、症状詳記の頼み方
- 返戻ファイルを使った再請求と、時効の5年

返戻が来たら、まず事由コードの頭の数字を見ます。5から始まれば資格や記載の話、6から始まれば診療内容の話です。前者は自分で直せる。

後者は、早見表で原因を調べてから先生に相談する流れ。

今やること
返戻内訳書の「事由」欄を開いて、コードの頭が5か6かを確認する。
▼ 事由別の直し方を見る

⏱ かかる時間の目安
資格まわりの返戻=1件5〜10分。診療内容の返戻=調べる30分+医師の記載待ち。
💰 かかるお金
なし。再請求に手数料はかかりません。

返戻と査定は、届く帳票が違います

同じ「戻ってきた」でも、返戻と査定は別もの。

社会保険診療報酬支払基金の様式では、返戻は返戻内訳書(機械様式第20号の2)、査定は増減点連絡書(機械様式第20号の1)に載ります。

手元の紙の名前を見れば、どちらか分かる。

もうひとつ、審査に入る前に弾かれる受付エラーがあります。オンライン請求の画面でエラーコードが出るやつ。これは返戻とは別枠です。

3つを並べると、こうなります。

区分 どこに出るか やること
返戻 返戻内訳書 直して出し直せば、その分は請求できる
査定 増減点連絡書 納得できなければ再審査を申し出る
受付エラー オンライン請求の画面 番台を見て、直すかそのまま出すかを決める

返戻は、出し直せば戻ってきます。査定は、もう減った後。
急ぐのは返戻のほうですね。

受付エラーの読み方はレセプトのエラー対応にまとめました。

直さなくていいエラーもあります

その手前の話をひとつ。覚えておくと、月初の午前中が丸ごと助かります。

レセプト電算で大量のエラー。開いてみたら、経過措置で算定している項目がまとめてエラー扱いになっていた。届出は厚生局に出してあって、受理番号もある。それでもエラー。

こういう時に審査支払機関へ問い合わせると、「そのまま送信してください」と返ってくることがあります。

拍子抜けしますよね。こちらはエラーを1件残らず直さないと出せないつもりでいるので。

ただ、これは電話口での特例ではありません。エラーの文言に、最初からそう書いてあります。

支払基金の「受付・事務点検ASPに係るチェック一覧(医科)」で、施設基準まわりのエラー(L4428)を引くと、こうです。

届出と異なる施設基準を算定しています。(画診共同、他医連携、臨時的取り扱い等除く)地方厚生(支)局長等へ届出を行っているかご確認ください。届出が行われている場合(受理番号が発行されている場合)はそのまま請求願います。

最後の一文が答え。受理番号が出ていれば、そのまま請求してよいと書いてあります。

同じ文型は1か所だけではありません。施設基準の逓減まわり(L4665)にも、入院料の減算コード(L4669)にも、末尾に「そのまま請求願います」が付いています。

届出まわりのエラーは、まとめてこの作りです。

4000番台は「正当」で終わることがあります

なぜ直さなくていいのか。番台の意味が違うからです。

基金の説明では、番台ごとにこう分かれています。

エラーコード 基金の説明 直すか
1000番台(L1) 医療機関単位でエラー 直して再請求
2000番台(L2) レセプト単位でエラー 直して再請求
3000番台(L3) 返戻となる要確認レセプト 直して再請求
4000番台(L4・4800除く) 査定又は返戻若しくは正当となる要確認レセプト 文言を読んで決める
4800番台(L48) 正常分として処理しているので再請求が不要 そのまま

4000番台は、行き先に「正当」が入っています。受付は通っていて、中身を見てくださいという合図です。

L4428は、その4000番台。だから直さずに出す道が最初から用意されています。

ASPのチェックは、レセプトの中身と届出の情報を突き合わせているだけ。共同利用や他の医療機関との連携、臨時的な取り扱いまでは判定できません。

文言のかっこ書きが「画診共同、他医連携、臨時的取り扱い等除く」となっているのは、そのためです。

4800番台は別枠。こちらは基金が最初から正常分として処理していて、エラーの一覧に出てくるだけで、もう確定した扱いです。

やることは4つ

  1. エラーの文言を最後まで読む:「そのまま請求願います」で終わっていることがある
  2. 受理番号を確認する:共同利用・他医連携・臨時的な取り扱いに当たるなら、受理番号がなくてもそのまま
  3. そのまま請求確定する:直さない
  4. 確認した内容を残す:翌月に同じ画面を見た人が迷わない

「◯月分の請求で、L4428のエラーが出ています。施設基準は届出済みで、受理番号もあります。このまま請求確定して差し支えないでしょうか」

「エラーは全部直すもの」と思っていると、ここでいちばん時間を取られます。文言の最後まで読めば済む話なので、一度分かれば数分。

受付不能と要確認の分け方、番台ごとの読み方はレセプトのエラー対応に詳しく書きました。

返戻事由コードは、頭の数字で2つに分かれます

返戻内訳書の「事由」欄には、4桁のコードと、その意味を書いた一文が並びます。

支払基金が公開している見本には6件のコードが載っていて、頭の数字で中身が分かれていました。

コードの頭 中身 誰が直すか
5000番台 資格・給付割合・記載の話 事務で直せる
6000番台 傷病名など診療内容の話 医師の確認が要る

見本に載っている実際の事由は、こんな形。

  • 5006 【保険者による資格返戻】記号・番号の誤り
  • 5006 【保険者による資格返戻】資格喪失後の受診
  • 5106 給付割合の不備です。
  • 5139 保険者番号と記号番号
  • 5301 受付回数と処方月日回数
  • 6002 傷病名を整理願います。

5301は、薬局の様式に載っていた例です。

ただしコード表そのものは公開されていません。文言も審査支払機関や帳票の版で差が出ます。手元の返戻内訳書に印字されている文言が正。

それでも5番台は事務、6番台は診療内容の見分けで、私の病院では足りていました。見本の6件も、その並びです。

目印がもうひとつ。

返戻内訳書のいちばん左に「資格返戻」の欄があって、基金の請求前の資格確認、または保険者の登録情報による資格確認で戻ったものに「*」が付きます。

*が付いていたら、診療内容は見なくて大丈夫。保険の話ですね。

文言を読んでも意味が取れない時は、審査支払機関に電話して聞けます。「この受付番号の返戻の事由について教えてください」で通じました。

聞くのは事務としてふつうの行動ですし、こちらが調べてから聞けば話も早い。

資格まわりの返戻|5000番台の直し方

ここが山場。とはいえ件数が多いぶん、型も決まっています。保険証の控えとレセコンの登録を突き合わせて直すだけ。1件あたり数分で終わります。

焦らなくて大丈夫。

記号・番号の誤り(5006)

原因は2つ。入力ミスか、患者さんが古い保険証を出していたかです。まずレセコンの登録と、受付で預かった保険証の控えを突き合わせる。

直し方は、正しい記号・番号に直して再請求。それだけ。

気をつけたいのが、直す前の一手間。番号だけ差し替えて済ませると、保険者そのものが変わっていた時に取りこぼして、翌月また同じ事由で戻ってくることになります。

保険者番号・記号・番号・枝番の4つをセットで見るのが安全ですよ。

資格喪失後の受診(5006)

退職や転職で、受診日にはもう前の保険の資格がなくなっていた状態です。返戻の中でも件数の多いところ。

ここで、知っておくと動きが変わる話を1つ。

支払基金は請求前に電子資格確認をしていて、新しい資格が分かる場合は自動で振り替えてくれます。この時は返戻ではなく「資格確認結果連絡書」が届く。

処理区分の欄に「振替」「分割」「枝番特定」と書いてあります。月の途中で資格が変わった場合は、受診日で2枚に分割されることも。

困るのは、新しい資格がまだ登録されていない時。基金は振替も分割もできないので、レセプトに書いた保険者へそのまま請求します。

この場合の処理区分は「レセプト記載の保険者に請求」、理由の欄には「新資格未登録」と印字されます。そして多くは、その保険者から5006で戻ってくる流れ。

返戻が来た=患者さんの新しい保険がまだ分からない状態、ということ。だから患者さんに連絡して、新しい保険証を確認するところから始めます。

連絡書に「新資格未登録」が出ていたら、返戻が届く前に動けますよ。

「以前お使いだった保険証が、受診日の時点で使えなくなっていたようです。今お持ちの保険証を教えていただけますか。こちらで手続きをし直します」

新しい保険が分かったら、レセコンで直す時に気をつけたいことが1つ。
多くのレセコンでは、前の保険情報を上書きせず、新しい保険として登録し直す形になります。

上書きすると、過去の月のレセプトまで新しい保険で出てしまうからです。

保険者番号と記号番号が合わない(5139)

保険者番号は合っているのに記号・番号が別の組み合わせ、という状態。

よくあるのが、同じ世帯の家族の分と取り違えていた場合。券面を見ればすぐ分かるのに、入力の段階では気づけません。

保険証の券面をもう一度見て、被保険者と受診者が同じ人かを確認する。お子さんの受診で、親の記号・番号をそのまま入れていた。これがよくある形。

給付割合の不備(5106)

負担割合の欄が、レセプトの中身と噛み合っていない状態。地味に見落とします。

見る場所は3つ。

  1. 年齢と負担割合:70歳になった月、75歳になった月は切り替わる
  2. 高齢受給者証の割合:現役並み所得なら3割。証の券面が正
  3. レセプト種別:本人・家族・高齢受給者の区分が、割合と揃っているか

誕生月の扱いは病院ごとに運用が違うところ。迷ったら先輩に聞くのが早い。

枝番が違う・入っていない

マイナ保険証の普及で増えた事由。枝番は、世帯の中で個人を見分ける2桁の数字です。ここだけ空欄のまま、がよくあります。

これも基金側で特定してくれる場合があって、その時は資格確認結果連絡書の処理区分に「枝番特定」と出ます。双子のお子さんで枝番が空欄だった時なども、ここで特定される。

返戻で戻ってきたら、オンライン資格確認の画面から枝番を取り直して、レセコンに入れ直します。ここは数分。

公費の受給者番号が合わない

医療券や受給者証の番号を、月が替わってもそのまま使っていた時に起きます。

公費は月ごとに番号が変わるものがあるので、その月の券面を見て入れ直すのが基本。

生活保護の医療券まわりは生活保護の患者さんの受付対応に詳しく書きました。

資格まわりの早見表

ここまでの6つを並べると、こうです。

事由 見るところ 直し方
記号・番号の誤り 保険証の控えとレセコンの登録 保険者番号・記号・番号・枝番を4つセットで直す
資格喪失後の受診 患者さんの新しい保険証 上書きせず、新しい保険として登録し直す
保険者番号と記号番号 被保険者と受診者が同じ人か 受診した本人の記号・番号に入れ直す
給付割合の不備 年齢・高齢受給者証・レセプト種別 3つが噛み合う割合に直す
枝番が違う・空欄 オンライン資格確認の画面 枝番を取り直して入れ直す
公費の受給者番号 その月の医療券・受給者証 その月の券面を見て入れ直す

記載まわりの返戻|事務の抜けで戻るもの

資格は合っているのに戻ってくるもの。ここも事務で完結します。先生を呼ぶ必要はありません。

氏名・生年月日・性別が保険者の登録と違う

「ワタナベ」の漢字違い。旧姓のまま。生年月日の元号の入力ミス。どれも地味に多いところで、保険者の登録と1文字違うだけで戻ってきます。

保険証の券面どおりに直します。旧字体は、レセコンで出せる字に置き換えて大丈夫な場合が多いのですが、ここは病院の運用に合わせてください。

摘要欄のコメントが入っていない

算定要件でコメントの記載が決まっている項目に、何も入っていない状態。摘要欄はレセプトの備考欄のことです。

  • 検査の実施日
  • 前回の実施日
  • 薬剤の投与理由
  • 診療開始日と算定日の関係

早見表で該当項目を引いて、「摘要欄に記載」と書かれている内容をそのまま入れる。調べれば答えが出るところです。

日数・回数が中身と食い違う

診療実日数とレセプトの中身が合わない。調剤なら「受付回数と処方月日回数」(5301)で戻ります。

カルテと突き合わせて、実際に来院した日を数え直します。月末の受診がレセプトに入っていない。これがよくある形でした。

同じ患者さんのレセプトが二重に出ている

入院と外来を別々に出したつもりが、期間として重なっていた。月の途中で保険が変わって2枚に分けた時に、片方の日付がずれていた。原因はこのあたりです。

重複は、どちらを残すかを先に決めてから手をつけてください。両方直すと余計にこじれます。

記載まわりの早見表

こちらも並べておきます。

事由 見るところ 直し方
氏名・生年月日・性別 保険証の券面 券面どおりに直す
摘要欄のコメント漏れ 早見表の該当項目 「摘要欄に記載」の内容をそのまま入れる
日数・回数の食い違い カルテの来院日 実際に来院した日を数え直す
同じ患者さんの二重請求 2枚の期間と日付 どちらを残すか決めてから直す

診療内容の返戻|6000番台は調べてから先生へ

ここからが時間のかかるほうです。

傷病名を整理願います(6002)

いちばん見る事由かもしれません。文面が短い。だから、何を求められているのかが分かりにくいところです。

実際に指摘されているのは、だいたいこのどれか。

  • 算定した検査や薬に対応する病名がない
  • 急性の病名が何ヶ月も残っている
  • 転帰が入っておらず、病名が積み上がっている
  • 疑い病名が確定後も残ったまま

まずカルテを開いて、算定した項目と病名を1対1で並べます。並べれば見えます。どこが空いているか、紙の上ではっきり分かるようになる。

気をつけたいのが、事務の判断で病名を足さないこと。傷病名を決めるのは医師です。並べて空いている所を見つけたら、そこを先生に確認する。

線引きの話はレセプトの病名は誰がつける?にまとめました。

この病名では認められない(適応外)

病名はある。でも通らない。その病名でその薬・その検査は認められない、という指摘です。

添付文書の効能・効果を確認して、算定した内容と合っているかを見ます。

合っていなければ、実際にどういう判断でその薬を出したのか、どういう狙いでその検査をしたのかを医師に聞く流れになります。

査定でいうと、増減点連絡書の事由「A」に当たる中身ですね。

回数や量が上限を超えている

「この検査は月1回まで」「この処置は1日1回まで」といった上限を超えて算定している状態。

ここは調べれば原因を絞り込めます。診療報酬早見表で該当項目を引いて、算定要件・回数の上限・適応を見る。そのうえで、上限を超えた日付を特定する。

私が実際にやっている順番は、このあとの「診療報酬早見表で、原因まで追う」にまとめました。

医学的な必要性が読み取れない

検査や処置は病名に合っている。回数も範囲内。それでも戻ってくる。「なぜこれが必要だったか」がレセプトから読み取れない時です。

このタイプは、レセプトを直すのではなく症状詳記を足して出し直す形。

診療内容の早見表

4つを並べると、こうなります。

事由 何を疑うか 次にやること
傷病名を整理願います 病名の抜け・期限切れ・転帰なし 算定項目と病名を1対1で並べる
この病名では認められない 適応外 添付文書の効能・効果を確かめる
回数や量が上限を超えている 上限の超過 早見表で上限と、超えた日付を特定する
必要性が読み取れない 説明不足 症状詳記を添えて出し直す

診療報酬早見表で、原因まで追う

6000番台の返戻で、いちばん大事にしている工程です。ここを飛ばすと、あとで倍かかります。

先生に聞く前に、自分で調べる。

  1. 返戻された項目を早見表で引く:点数だけでなく、その下の注と通知まで読む
  2. 算定要件を確認する:どんな条件で算定できる項目なのか
  3. 回数・期間の上限を見る:月1回、週2回、1入院につき1回など
  4. 適応を見る:対象となる病態・病名の指定があるか
  5. カルテと突き合わせる:実施日、回数、その時の病名を並べる

ここまでやると、返戻された原因が1つに絞れます。「病名がないからだ」「2回目が上限を超えているからだ」と、はっきり言えるようになる。

なぜここまでやるのか。こちらが調べておかないと、先生も何を書けばいいか分からないからです。

「返戻が来たので詳記をお願いします」だけ持っていくと、先生は返戻の理由を知らないまま、いつのどの検査の話なのかをカルテの最初から探すところで時間を使うことになります。

結果、時間がかかりますし、書いてもらった内容が指摘と噛み合わないことも。

調べる時間は30分ほど。その30分で、先生の時間が5分で済みます。悪くない取引ですよ。

算定要件は算定ナビからも公式資料で確かめられますよ。

医師への確認は、4つを添えて

調べ終わったら、先生に持っていきます。

伝える時に添えるのは4つ。

  1. 患者名とカルテ番号:先生がすぐカルテを開ける
  2. 実施した日:何月何日にこの検査をしたか
  3. 早見表で見た決まり:月1回まで、などの根拠
  4. 書いてほしいこと:何を書けば通るのか

この4つが揃っていると、先生はカルテを開いてその場で答えられます。逆に1つでも欠けると、先生の側で調べ直す時間が発生します。

「〇〇様、カルテ番号〇〇の件です。早見表では、この検査は月1回までとなっていました。4日と18日に実施されていて、2回目が必要だった理由を書いていただけますか」

言い方のコツを1つ。「返戻されました」より「こう書けば通ります」から入るほうが、話が早く進みます。

先生も忙しいので、判断する材料を先に出すほうが親切ですね。

患者IDも一緒に伝えると、電子カルテでの検索がさらに速くなりますよ。

症状詳記は、指摘に答える形で

医学的な必要性を問われた返戻では、症状詳記を添えて出し直します。事務だけでは終わらない場面。

症状詳記は、診療行為の必要性を審査側に説明する文章です。支払基金から詳記を求められるのは、保険者からの再審査請求で判断が難しい事例、という案内。

返戻に自分から添えるのは、こちらの判断でできます。

事務側で用意するのは、先生が書きやすい下地です。

  • 返戻の事由(原文のまま)
  • 該当する算定項目と実施日
  • 早見表で確認した算定要件
  • 現在ついている病名の一覧

先生が書いた内容は、そのまま摘要欄またはコメントに入れて再請求します。
ここは書き換えないところ。医学的な判断に事務が手を入れると、意味が変わってしまいます。

分量は、指摘に答える範囲でじゅうぶん。長く書くほど通るわけではありません。

返戻ファイルを使った再請求のやり方

直したら出し直します。ここに大事な決まりが1つあって、知らずにやると二重請求になりかねません。

支払基金は「新たにレセプトを作成せずに、必ず返戻ファイルを使用して再請求レセプトを作成」するよう案内しています。

オンライン請求をしている医療機関への紙の返戻レセプトは、令和6年9月末で送付が終わりました。令和6年10月以降は、返戻ファイルをダウンロードして再請求する形です。

紙で請求した分の返戻は、今も紙のまま届きます。

流れはこの4つ。

  1. オンライン請求システムから返戻ファイルをダウンロードする
  2. レセコンに取り込む
  3. 事由に沿って直す
  4. 当月分のレセプトと一緒に、10日までに送信する

ゼロから作り直すと、受付番号が引き継がれません。二重請求と見なされることもあるので、必ず返戻ファイルから作ってください。ここは間違えたくないところ。

締切は当月分と同じで、オンライン請求は10日まで。10日までに送った分にエラーが出た時だけ、12日までなら訂正して出し直せます。

12日は締切ではなく、エラー分の救済枠です。

操作で詰まったら、支払基金のヘルプデスク(0120-60-7210)が使えます。私も年に何度か電話していました。

返戻の再請求は、いつまでにやればいい?

よく「2年」と書かれていますが、支払基金のQ&Aを読むと違いました。

診療報酬請求権の時効は、令和2年4月診療分から原則5年間。起算日は診療月の翌月1日です。令和2年3月診療分までは3年間でした。

原審査で減額された分の時効も同じ扱い、と案内されています。

とはいえ、5年あるからゆっくりでいい話ではありません。ためると詰みます。次の月の返戻と混ざって、どれがどれだったか分からなくなるからです。

私がやっているのは、返戻が来た月のうちに片づけること。

資格まわりはその日のうちに直して、診療内容のものは先生に依頼を出すところまでをその週のうちに終わらせるようにしています。

査定(増減点連絡書)が来た時の事由記号

返戻ではなく点数が減っていた場合は、増減点連絡書の「事由」欄にアルファベットが入ります。支払基金の記号凡例では、次のように分かれていました。

診療内容に関するもの

記号 意味
療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの
療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの
療養担当規則等に照らし、A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの
告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの

事務上に関するもの

記号 意味
固定点数が誤っているもの
請求点数の集計が誤っているもの
縦計計算が誤っているもの
その他

現場の言葉に読み替えると、こうなります。

  • =病名がない、または適応外。病名の追加や詳記で説明できる余地あり
  • =回数・量が多い、重複している。必要性を書けば通ることも
  • =算定要件を満たしていない。事実として満たしていないことが多く、直しようがない場合も
  • F・G・H=計算の話。レセコンの設定や点数マスタを疑います

連絡書に「縦覧点検」「入外点検」と表示されることもあります。

前者は同じ患者さんの複数月をまたいだ点検、後者は同じ患者さんの入院と入院外を突き合わせた点検の結果。どちらも、その月のレセプトを見ているだけでは気づけません。

単月では気づけないので、指摘されて初めて分かることが多いところ。

査定に納得できなければ、再審査を申し出られます。時効そのものは返戻と同じ扱い。ただ実務では、受け取った月のうちに判断しておくとカルテを探す手間が少なくて済みます。

よくある質問(FAQ)

Q. 返戻された分のお金は、いつ入りますか?

再請求して審査を通ったあとです。当月分と一緒に10日までに送れば、通常の支払いサイクルに乗ります。返戻された時点では、その分は未払い。

Q. 患者さんがもう来院していない場合、資格の返戻はどう直しますか?

まず電話で新しい保険証を確認します。連絡がつかない時は、保険者に問い合わせて資格の有無を確認する方法もありますが、病院ごとに運用が違うところ。

先輩か上長に確認してから動くのが安全です。

Q. 同じ事由で毎月返戻が来ます。どうすれば減りますか?

原因が入力の段階にあることが多いので、レセプト点検ではなく受付と入力の手順を見直します。

資格喪失なら受付での保険証確認、傷病名なら診察後の病名チェックのタイミング。返戻を一覧にして事由ごとに数えると、どこで詰まっているか見えてきますよ。

Q. 医師が症状詳記を書いてくれない時は?

書く材料が足りていない可能性があります。返戻の事由・実施日・早見表の根拠・書いてほしい内容の4つを揃えて、もう一度持っていく。

それでも難しければ、その項目を取り下げて再請求する判断もあります。上長と相談する場面ですね。

Q. 再請求したのに、また同じ事由で返戻されました

指摘と直した内容が噛み合っていない状態。事由の文言をもう一度そのまま読んで、何を求められているかを分解します。

「傷病名を整理願います」なら、病名を足すのか、期限切れの病名を消すのか、転帰を入れるのか。どれを求められているかで、直す場所が変わりますよ。

Q. 届出は出しているのに、施設基準のエラーが毎月出ます

エラーの文言の末尾を見てください。「届出が行われている場合(受理番号が発行されている場合)はそのまま請求願います」とあれば、受理番号を確かめてそのまま送ります。

共同利用や他医療機関との連携、臨時的な取り扱いに当たる時も同じ。職場に1枚メモを残しておくと、翌月に同じ確認をしなくて済みますよ。

Q. 月遅れ請求と返戻の再請求は同じものですか?

別ものです。月遅れ請求は、その月に出しそびれたレセプトを翌月以降に出すこと。返戻の再請求は、いったん出して戻ってきたものを直して出し直すこと。

返戻ファイルを使うかどうかが、いちばん分かりやすい違い。

Q. 資格確認結果連絡書が届きました。これも直すのですか?

多くは直さなくて大丈夫。審査支払機関が新しい資格に振り替えたり、レセプトを分割したりした結果のお知らせです。

ただし処理区分が「レセプト記載の保険者に請求」で、理由が「新資格未登録」なら話が別。近いうちに返戻が来る合図なので、先に患者さんの保険を確認しておきます。

返戻が来たら、この順で

  1. 事由コードの頭を見る:5番台なら事務で完結、6番台なら調べてから先生へ。左に*があれば資格の話
  2. 6番台は早見表で原因まで追う:算定要件・回数の上限・適応を見て、なぜ返戻になったかを1つに絞る
  3. 先生には4つを添える:患者名とカルテ番号、実施した日、早見表で見た決まり、書いてほしいこと
  4. 再請求は返戻ファイルから:ゼロから作り直さない。当月分と一緒に10日まで

返戻は、事由を読んで固まっている時間がいちばん長いところ。
分け方さえ決まっていれば、あとは順番に手を動かすだけ。難しい判断はほとんど要りません。

私も最初の頃は、返戻の紙を裏返して見ないふりをしていました。今は事由を見て、その場で「これは5分」「これは先生案件」と仕分けています。慣れというより、順番を決めたからです。

保険証・医療証まわりの基本は、無料の受付で固まらない制度早見表PDFにもまとめています。

参考にした資料

いずれも2026年9月9日に確認しました。

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■ 著者プロフィール
3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1病院で元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年9月9日