「今月、この患者さんの血中濃度を3回測っているので、3回算定していいですか?」
医学管理料の中でも、特定薬剤治療管理料は回数の数え方で迷いやすい項目です。
算定1回のルールで迷いやすいところを、レセプト点検をしてきた立場から書きます。
✅ この記事でわかること
- 特定薬剤治療管理料1・2の点数と対象の違い
- 「月1回」の数え方(複数回測っても1回になる理由)
- 4か月目以降に点数が半分になる条件と、ならない条件
- 主な加算の種類
- レセプト点検で対象薬剤を確認する時の視点
結論から言うと、特定薬剤治療管理料は、原則として同じ月に何回血中濃度を測っても、算定は1回だけです。算定するのは「第1回目の測定・管理を行ったとき」で、2回目以降の測定にかかる費用は、この点数に含まれます。
別の疾患に別の薬剤を投与している場合や、てんかんで2種類以上の抗てんかん剤を使っている場合など、例外もあります。
特定薬剤治療管理料とは|1は470点、2は100点
医学管理料の中でも、特定薬剤治療管理料は「B001の2」にあたる項目です。
大きく分けると、点数は2つ。
| 区分 | 点数 | どんな時に算定するか |
|---|---|---|
| 特定薬剤治療管理料1 | 470点 | 薬物血中濃度を測定し、その結果に基づいて投与量を精密に管理した場合 |
| 特定薬剤治療管理料2 | 100点 | サリドマイド製剤等では安全管理手順の遵守状況を確認・報告した場合、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤では管理状況の確認と適正使用の説明を行った場合 |
1と2は、対象になる薬剤も確認する中身もまったく別物です。「特定薬剤治療管理料」の名前だけで、どちらか判断しないようにしたいところですね。
この記事は、算定の件数として圧倒的に多い「1」が中心です。
「月1回」の数え方|複数回測っても、算定は1回
もう一度、冒頭の疑問です。
同じ月に血中濃度を2回、3回と測定していても、特定薬剤治療管理料として算定できるのは1回だけです。
算定するタイミングは、その月の第1回目の測定・管理を行ったときと決まっています。
2回目以降の血中濃度測定やそれに基づく管理にかかる費用は、この1回分の点数に含まれる扱いです。別の日に測ったからといって、そのつど算定を積み上げることはできません。
ただし、例外もあります。
- 別の疾患に対して別の薬剤を投与した場合=例えば、てんかんに対する抗てんかん剤と、気管支喘息に対するテオフィリン製剤の両方を投与している場合
- 同一疾患でも、対象になる区分が違う薬剤を投与した場合=例えば、発作性上室性頻脈に対してジギタリス製剤と不整脈用剤の両方を投与している場合
この2つに該当する時は、それぞれ算定できます。「同じ患者さんだから1回」ではなく、「同じ区分の薬剤・疾患なら1回」と数える決まりです。
もうひとつ、てんかんの患者さんだけに用意された例外があります。
2種類以上の抗てんかん剤を投与している患者さんについて、同一暦月に複数の抗てんかん剤の血中濃度を測定し、その結果に基づいて個々の投与量を精密に管理した場合は、その月に限り2回まで算定できます。
抗てんかん剤どうしは同じ区分なので、上の2つの例外では拾えません。ここだけ別枠と覚えておくと、算定漏れを防げます。
「この患者さん、血中濃度を月に何回測っていますか。今月すでに算定済みか、先に確認させてください」
4か月目以降は点数が半分に|ただし全員ではない
もうひとつ、見落としやすいのが4か月目以降の減額です。
抗てんかん剤・免疫抑制剤を投与している患者さん以外への血中濃度測定と管理は、初回の算定から数えて4か月目以降、所定点数の100分の50で算定します。
470点の半分、235点になる計算です。
ただし、対象から外れる患者さんも。
- 抗てんかん剤を投与している患者さん
- 免疫抑制剤を投与している患者さん
- 躁うつ病・躁病でバルプロ酸ナトリウムまたはカルバマゼピンを投与している患者さん=抗てんかん剤の対象に含まれます
この3パターンは、4か月目以降も減額の対象になりません。「4か月目からは一律半分」と覚えてしまうと、この患者さんたちを誤って減額してしまう可能性があります。
「4か月目以降」は、初回の算定から暦月で数えます。1月に初回算定した場合、4月分からが該当月です。
主な加算|臓器移植・バンコマイシン・初回月
特定薬剤治療管理料1には、状況に応じた加算がいくつか。
ここで整理するのは代表的な4つ。ミコフェノール酸モフェチル・エベロリムスを投与している臓器移植後の患者さん向けの加算など、対象がさらに細かいものもあります。
| 加算の種類 | 点数 | 対象 |
|---|---|---|
| 臓器移植加算 | 2,740点 | 免疫抑制剤を投与している臓器移植後の患者。移植を行った月を含め3か月間 |
| バンコマイシン加算 | 530点 | 入院中、バンコマイシンを数日間以上投与し、安定した血中至適濃度を得るため頻回に血中濃度を測定して投与量を精密管理した場合。1回限り |
| 初回月加算 | 280点 | 臓器移植・バンコマイシンの対象患者以外で、投与中薬剤の安定した血中至適濃度を得るため頻回の測定が行われる初回月に限り算定。薬剤を変更した場合は算定できません |
| 急速飽和・てんかん重積 | 740点 | ジギタリス製剤の急速飽和、または全身性けいれん発作重積状態で抗てんかん剤の注射薬剤等の血中濃度を測定し投与量を精密管理した場合。1回限り。この点数を算定した月は、初回月加算を含め別途1は算定できません |
臓器移植加算を算定する月は、初回月加算は別に算定できません。急速飽和・てんかん重積の点数を算定した月も、初回月加算を含めて、通常の特定薬剤治療管理料1は別途算定できない決まりです。
加算同士の組み合わせも、原文の注書きで確認する癖をつけておきたいところですね。
対象薬剤の見分け方|よく出る組み合わせ8つ
特定薬剤治療管理料1の対象になる疾患・薬剤は、原文に20項目以上並んでいます。全部を覚える必要はありません。よく出る組み合わせを、疾患とセットで押さえてください。
| 疾患 | 対象になる薬剤(分類) | 一般名の例 |
|---|---|---|
| 心疾患 | ジギタリス製剤 | ジゴキシン |
| てんかん | 抗てんかん剤 | フェニトイン・カルバマゼピン・バルプロ酸など |
| 臓器移植後(拒否反応の抑制)・一部の自己免疫疾患など | 免疫抑制剤 | シクロスポリン・タクロリムス水和物など |
| 気管支喘息・慢性気管支炎など | テオフィリン製剤 | テオフィリン |
| 不整脈(継続的に投与) | 不整脈用剤 | アミオダロン・リドカインなど |
| 統合失調症 | ハロペリドール製剤・ブロムペリドール製剤/クロザピン(治療抵抗性) | ハロペリドール・ブロムペリドール・クロザピン |
| 躁うつ病・躁病 | リチウム製剤/バルプロ酸ナトリウム・カルバマゼピン | 炭酸リチウムなど |
| 悪性腫瘍 | メトトレキサート | メトトレキサート |
薬剤名だけを見ても決まりません。「どの疾患に、どの薬剤か」がセットで、原文の区分に載っているかどうかで決まります。
上の表は代表例です。同じ薬剤でも、原文の区分に載っていない疾患なら対象になりません。逆に、1つの薬剤が複数の区分に登場することもあります。
たとえば免疫抑制剤は、臓器移植後の拒否反応の抑制だけではありません。
シクロスポリンならベーチェット病や再生不良性貧血など、タクロリムス水和物なら関節リウマチや潰瘍性大腸炎などにも、それぞれ別の区分があります。
移植後でないから対象外、とは決められないところです。
表にない薬剤は、原文の別表で確認します。イマチニブ・スニチニブ・ブスルファンなど、悪性腫瘍系の分子標的薬を中心に十数種類。
レセプト点検では、この順番で見ると迷いにくいです。
- 主病名と、投与されている薬剤が対応しているか:上の表、または原文の対象疾患とセットで見ます
- 血中濃度測定の記録があるか:測定と、その結果に基づく投与量の管理が診療録に残っているか
- 治療計画の要点がカルテに記載されているか:血中濃度、治療計画の要点は診療録への記載または添付が必要です
「この薬剤、特定薬剤治療管理料の対象になる疾患と紐づいているか、原文の別表で確認してもいいですか」
よくある質問(FAQ)
Q. 同じ月に血中濃度を2回測定したら、2回算定できますか?
いいえ。算定できるのは1回だけです。第1回目の測定・管理を行った時に算定し、2回目以降の費用はその点数に含まれます。
Q. 4か月目以降は、必ず点数が半分に下がりますか?
いいえ。
抗てんかん剤・免疫抑制剤を投与している患者さん(躁うつ病等でバルプロ酸ナトリウム・カルバマゼピンを投与している患者さんを含む)は、4か月目以降も減額の対象になりません。
Q. 特定薬剤治療管理料1と2、どちらを算定すればいいですか?
対象になる薬剤が別物です。
1は血中濃度を測定して投与量を管理する薬剤(ジギタリス製剤・抗てんかん剤など)、2はサリドマイド製剤等またはカルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤が対象です。
Q. てんかんの患者さんが、抗てんかん剤を2種類使っています。この場合は?
2種類以上の抗てんかん剤を投与されているてんかんの患者さんについて、同一暦月に複数の薬剤の血中濃度を測定し、その結果に基づいて個々の投与量を精密に管理した場合は、その月に限り2回まで所定点数を算定できます。
Q. 臓器移植後の患者さんへの加算は、いつまで続きますか?
臓器移植を行った日の属する月を含め、3か月間です。
4か月目以降は臓器移植加算そのものがなくなりますが、免疫抑制剤の投与は続いているため、4か月目以降の所定点数の減額対象からも外れたままです。
Q. 抗てんかん剤とテオフィリン製剤、両方を投与している患者さんは?
別の疾患に対する別の薬剤にあたるため、それぞれ算定できます。
てんかんに対する抗てんかん剤の管理と、気管支喘息に対するテオフィリン製剤の管理は、別に数える扱いです。
数え方を知っていれば、迷わない
- 月1回、初回の測定・管理を行った時に算定:同じ月に何回測っても、積み上げでは算定できません
- 4か月目以降の減額には対象外の患者さんがいる:抗てんかん剤・免疫抑制剤の投与患者さんは、そのまま所定点数です
- 1と2は対象薬剤が別物:名前だけで判断せず、原文の対象一覧で確認します
特定薬剤治療管理料は、対象薬剤が多い分、いちばん迷いやすいのは「回数の数え方」と「減額の対象かどうか」です。ここさえ押さえておけば、レセプト点検で立ち止まる回数は減っていきますよ。
特定薬剤治療管理料をふくむ医学管理料の点数・算定要件は、算定ナビから公式資料と条文の出典つきで検索できます。この記事の対象薬剤に迷ったら、算定ナビで項目名を検索してその場で確かめてください。
医学管理料の全体像はこちらの記事にもまとめました。
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■ 著者プロフィール
3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1院で元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。
最終更新日:2026年9月2日