「湿布なのに、どうして減点されたんですか」
整形外科のレセプトを点検していると、貼付剤の行で止まることがあります。

レセプト点検でこの薬を何度も見てきた立場から、確認する場所を書きますね。

✅ この記事でわかること
- ロコアテープが他の貼付剤と違う理由
- 病名で見るポイント(令和8年8月の公表事例)
- 全身に効く痛み止めと同時に出ている時の注意
- 貼付枚数の上限と、超えた時に算定できなくなる5つ
- 同時に処方されていたら確認したい薬

結論から言うと、ロコアテープは病名だけを見ていても足りません。この薬は、貼っているのに飲み薬なみの量が体に入ります。

見るポイントは4つです。

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ロコアテープは、2枚で飲み薬1日分

ロコアテープは、エスフルルビプロフェンとハッカ油を含む貼付剤。劇薬に指定されています。

まず押さえたいのが、この薬の特殊性。2枚貼ると、飲み薬の痛み止めを1日きちんと飲んだのと同じくらいの量が体に入ります。

電子添文の「用法及び用量に関連する注意」には、こう書かれています。

本剤2枚貼付時の全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達することから、1日貼付枚数は2枚を超えないこと。

ここでいう通常用量とは、フルルビプロフェンの飲み薬フロベン錠40を1回40mg・1日3回、つまり1日120mg飲んだ時のこと。

1回分ではなく、1日分です。

なお用法は、1日1回の貼付で、同時に2枚まで。2枚は上限であって、標準量ではありません。

「一般の貼付剤は全身に効かない」ではない

ここは誤解しやすいところ。ロキソニンテープにもモーラステープにも、全身への影響を前提にした禁忌があります。貼付剤はどれも、多かれ少なかれ血液に入るところ。

ロコアテープが違う点は、有無ではなく。飲み薬なみに達します。

見るのは4つ。理由は2つ

4つのポイントは、2つの理由から出てきます。

貼付剤だから見るもの
- ① 病名
- ③ 貼付枚数

飲み薬なみに体に入るから見るもの
- ② 全身に効く痛み止めとの併用
- ④ 組み合わせに注意する薬

ロコアテープは、この両方がかかります。一般の貼付剤と同じ感覚で流すと、②と④が丸ごと抜けますね。

ポイント①|病名は「変形性関節症」か

電子添文の効能・効果は、「変形性関節症における鎮痛・消炎」。この1つだけです。

令和8年8月31日、支払基金から公表事例が出ました。「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)(第39回)」の事例861。

事例の右上には「支払基金・国保統一事例」の表示。国民健康保険中央会から合意が得られたもの。そういう位置づけです。

内容を要約すると、こうなります。

  • 腰痛症・肩関節周囲炎・腱鞘炎など、整形外科でよく使う17の傷病名では、算定は原則として認められない
  • 部位の記載がない変形性関節症では、原則として認められる

17の傷病名は、首や肩の症状から、腰の症状、腱や関節の疾患、けが、筋肉痛まで。正確な一覧は、支払基金の原文をご覧ください。この記事の末尾からたどれます。

理由は、変形性関節症が「関節の軟骨がすり減っていく疾患」だから。腰痛症は症状の名前、捻挫や打撲はけがで、軟骨の変性とは成り立ちが違います。

だから効能・効果に当てはまらない。そう整理されています。

部位まで書く必要はない

変形性関節症は、部位によって呼び方が変わります。変形性膝関節症、変形性頚椎症、変形性腰椎症といった具合。

レセプトに部位まで書かなければいけないのか。

その必要はありません。診療報酬請求書等の記載要領等に、部位の記載が必要とは示されていないためです。

事例でも、部位の記載がない変形性関節症は原則として認められる、と整理されています。

なお、部位を書いた場合の扱いについては、この事例では触れられていません。「書いてはいけない」ではないので、そこは切り分けたいところ。

禁忌の病名も見る

効能・効果に合うかどうかとは別に、禁忌の病名がないかも見るところ。電子添文の禁忌は10項目。

消化性潰瘍、重篤な血液の異常、重篤な肝機能障害、重篤な腎機能障害、重篤な心機能不全、重篤な高血圧症、成分やフルルビプロフェンへの過敏症、アスピリン喘息、併用禁忌の薬を投与中、妊娠後期の女性。

ロキソニンテープの禁忌は2項目です。禁忌の数だけを見ても、一般の貼付剤とは別物ですね。

ポイント②|全身に効く痛み止めが同時に出ていないか

ここが、病名の次に見るところです。

電子添文には、こう書かれています。

本剤投与時は他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けることとし、やむを得ず併用する場合には、必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意すること。

「全身作用を期待する消炎鎮痛剤」なので、飲み薬だけではありません。坐薬や注射も入ります。内服だけを見ていると、術後の坐薬との併用を見落としますよね。

効きめが倍になる話ではありません。上乗せされるのは、胃や腎臓への負担のほうです。

そして、禁止ではありません。「可能な限り避ける」「やむを得ず併用する場合は必要最小限」なので、医師が承知のうえで出していることもあります。

同じ処方に並んでいたら、そのまま通す前に確認の一言を。

「ロコアテープと痛み止めの内服が同じ処方に入っていますが、このままで大丈夫でしょうか」

一般の貼付剤では、ここまで強い注意は書かれていません。だからロコアテープだけ別に見る癖をつけると拾えます。

ポイント③|枚数は上限を超えていないか

貼付剤には、1処方で出せる枚数の上限があります。令和4年度の改定から63枚

告示では「湿布薬」ではなく貼付剤の語が使われています。

対象は「鎮痛・消炎に係る効能・効果を有する貼付剤」で、麻薬・向精神薬であるものと、専ら皮膚疾患に用いるものは除きます。ロコアテープは鎮痛・消炎なので、対象に入りますね。

上限の1日2枚で使っても、63枚でおよそ1か月分。長期処方で超えることがあります。

超えると算定できないのは5つ

ここは3つで覚えている方が多いところ。告示が算定しないと定めているのは5つです。

区分 名称
F000 調剤料
F100 処方料
F200 薬剤(超過分に係る薬剤料に限る)
F400 処方箋料
F500 調剤技術基本料

金額がいちばん大きい項目は薬剤料。ここを落とすと、影響を小さく見積もってしまいます。

そして、ただし書きがあります。

ただし、医師が疾患の特性等により必要性があると判断し、やむを得ず63枚を超えて投薬する場合には、その理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載することで算定可能とする。

超過=即カットではありません。点検の実務では、理由の記載があるかどうかを見ます。

複数の貼付剤が出ている時は、合計枚数で見ます。ロコアテープだけ数えて安心しないところ。

ポイント④|組み合わせに注意する薬はないか

ロコアテープには、一緒に使えない薬があります。ニューキノロン系の抗菌薬の一部です。

併用禁忌=一緒に出せない

一般名 販売名
エノキサシン水和物
ロメフロキサシン ロメバクト、バレオン
ノルフロキサシン バクシダール
プルリフロキサシン スオード

レセプトに載るのは販売名。後発品はまた別の名前になるので、一般名で照合できる仕組みがあると確実ですね。

併用注意=出ていたら確認

  • 上記以外のニューキノロン系抗菌薬、オフロキサシン等
  • ワルファリン
  • メトトレキサート
  • リチウム製剤

こちらは「出せない」ではありません。ただ、ワルファリンとメトトレキサートは、高齢者や関節リウマチの処方で実際に重なりやすいところ。

併用禁忌の4剤より、整形外科では見る機会が多いかもしれません。

なお、長く続く場合は定期的に尿・血液・肝機能の検査を行うよう、電子添文が求めています。貼付剤の感覚で出しっぱなしにできる薬ではない、というところ。

「原則として」の意味

公表事例について、大事な補足をしておきます。

支払基金は、公表資料の冒頭でこう述べています。

療養担当規則等に照らし、当該診療行為の必要性などに係る医学的判断に基づいた審査が行われることを前提としておりますので、本公表事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意願います。

つまり、認められない側にも、認められる側にも、この但し書きがかかります。「変形性関節症さえ付いていれば必ず通る」でもありません。

医療事務としては、17の傷病名を「査定されやすい組み合わせ」として頭に入れつつ、最終的な判断は医師と病院のルールに委ねる。この距離感が現実的だと思います。

レセプト点検で見る順番

4つのポイントを、実際に手が動く順に並べてみますね。

  1. ロコアテープが処方されているか:他の貼付剤と混ざっているので、薬剤名で拾います
  2. 変形性関節症の病名が付いているか:部位の記載は不要。あわせて禁忌の病名も見る
  3. 全身に効く消炎鎮痛剤が同じ処方にないか:飲み薬・坐薬・注射。あれば医師に確認
  4. 貼付剤の合計枚数と、組み合わせに注意する薬:枚数は他の貼付剤と合算。超えていたら理由の記載を確認

病名だけで判断していると、②③④が抜けます。2枚で飲み薬1日分。そう思い出すと、②と④が自然につながっていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. ロコアテープは腰痛症では絶対に算定できませんか?

「絶対に」ではありません。原則として認められないという整理です。個別の診療内容によっては認められる場合もあります。

Q. 変形性関節症の病名に、部位は書かなくていいですか?

書かなくても、原則として認められます。記載要領等に部位の記載が必要とは示されていないため。部位を書いた場合の扱いは、この事例では触れられていません。

Q. 63枚を超えたら、必ず算定できなくなりますか?

いいえ。医師が必要性を判断してやむを得ず超える場合は、理由を処方箋と診療報酬明細書に記載することで算定できます。点検で見る点は、理由の記載があるかどうか。

Q. 63枚は1か月の上限ですか?

いいえ、1処方あたりの上限です。月に2回来院して、それぞれ63枚以内であれば、月の合計が63枚を超えていても差し支えありません。

Q. 社保と国保で扱いは違いますか?

この事例は支払基金・国保統一事例として公表されました。取扱いの整理は同じです。

ただし審査は個別の医学的判断によるので、結果が必ず一致するとは限りません。

Q. いつから適用されますか?

事例に適用開始時期の定めは示されていません。公表は令和8年8月31日です。診療月の扱いで迷う時は、審査支払機関に確認するのが確実です。

Q. 一般的な貼付剤も同じですか?

薬剤ごとに効能・効果が違うところ。たとえばロキソニンテープは「変形性関節症、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛」の3つ。

ロコアテープより広いものの、腰痛症や肩関節周囲炎は入っていません

「貼付剤ならどの病名でも通る」ではないので、それぞれの電子添文で確認したいところ。

Q. 内服の痛み止めと併用したら必ず査定されますか?

必ずではありません。電子添文は「可能な限り避ける」「やむを得ず併用する場合は必要最小限」としています。医師の判断で必要な場合もあるため、確認したうえでの判断ですね。

貼付剤と飲み薬の両方で見る

  1. 病名は変形性関節症か:17の傷病名は原則として認められません。部位の記載は不要。禁忌の病名も見ます
  2. 全身に効く消炎鎮痛剤が同時に出ていないか:飲み薬・坐薬・注射。電子添文が「可能な限り避ける」としています
  3. 枚数は1処方63枚以内か:他の貼付剤と合算。超える場合は理由の記載を確認します
  4. 組み合わせに注意する薬はないか:ニューキノロン系の一部が併用禁忌。ワルファリンなどは併用注意

一般の貼付剤と同じ感覚で流していると、②と④で止められません。2枚で飲み薬1日分

この1つを覚えておくと、4つのポイントが1本の線でつながりますよ。

貼付剤に限らず、薬剤と病名の対応は算定ナビから公式資料の出典つきで確認できます。

一次資料

支払基金は、公表事例が「すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではない」と留意を求めています。最終的な判断は、診療内容と病院のルールによります。

この記事はレセプト点検の実務向けです。薬の使い方や飲み合わせについては、医師・薬剤師にご相談ください。

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■ 著者プロフィール
3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1院で元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年9月3日