「福島県の子ども医療証です。窓口無料でいいですよね」
他県から来た患者さんの公費は、受付でいちばん迷うところ。

県外から来た子どもの受診で分岐に迷った経験があります。8つの分かれ道に整理しますね。

✅ この記事でわかること
- 子ども医療費で県外対応しているのが福島県だけである理由と、使えない場合
- 社保・市町村国保・国保組合で払い方がまったく違うこと
- 支払基金の一覧に載っている50市町村と、載っていない9市町村
- 番号だけで判断してはいけない理由
- 受付で見る順番と、月末に確認すること

県外の窓口で使える子ども医療費助成の受給者証は、支払基金の受託一覧では福島県だけ。ほかの都道府県にはありません。

だからこそ、受付では判断がつきにくいところ。

結論から言うと、「福島県だから」でひとまとめにできません。分岐は8つあります。

見るのは番号から。ただし番号は入口です。

今やること
保険証の種類(社保/市町村国保/国保組合)と、受給者証の番号の先頭4桁を見る。
▼ 受付で見る順番へ

この記事の前提

この記事は、自院が福島県外にある場合の話です。

福島県内の医療機関には、市町村ごとの別の取扱いがあります。たとえばいわき市の区切りは、県内か県外かではなく市内か市外か。

郡山市の医療機関がいわき市の子を診れば、それは「市外」の扱いです。

福島県内の医療機関では、その市町村の案内をご覧くださいね。

受付とレセプト点検で見る順番

窓口で確定できる項目は、2と4くらい。番号は入口です。実際に手が動く順に並べてみますね。

受付で

  1. 保険を見る:社保か、市町村国保か、国保組合か
  2. 番号の先頭4桁を見る:8007なら福島県の子ども医療
  3. 公費マスタに入れてみる:通らなければ、その場で無料にしない
  4. 免除証明書があれば、有効期限を見る

レセプト点検で

  1. 国の公費が入っていないか:入っていれば2併になることがある
  2. 金額の条件がある7自治体か:月末に21,000円を確認
  3. 自院が併用レセプトを出せているか

分岐の中身は、このあと順番に見ていきます。

受付で見る分岐|①②④⑥⑦

分岐①|まず、保険の種類を見る

いちばん最初がここ。3つに分かれます。

保険 県外の窓口での扱い
被用者保険(社保) 公費併用。市町村によっては窓口負担なし
市町村国保 保険給付が10割。公費負担者番号を使わない
国保組合 県外では公費併用にできない。窓口徴収

市町村国保は「公費」ではない

ここがいちばん誤解されるところ。

福島県国民健康保険団体連合会の資料には、こう書かれています。

福島県内の全保険者(国保組合は除く)において、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで10割給付

つまり公費で助成しているのではなく、保険給付そのものが10割。一部負担金が0割です。

同じ資料の備考にも、はっきり書かれています。

市町村国保の被保険者は公費併用請求の対象となりません(国保10割給付)。

だから市町村国保の子には、公費負担者番号を使いません。医療証を出されても、レセプトは公費併用にならない。

ここを取り違えると、本来0割の子から3割をいただいてしまいます。

ただし現実には、県外のレセコンが福島県の給付割合10割を持っていないことも。その時は窓口でお支払いいただいて、患者さんが市町村へ申請する形になります。

いわき市も福島市も、住民向けにそう案内しています。

国保組合は逆

窓口徴収が必要な保険は、こちら。

公費併用請求の対象は当該市町村に住所を有する国保組合(福島県歯科医師国保組合・福島県医師国保組合を含む全国の全ての国保組合)の被保険者です。

国保組合は公費併用の対象。ただし国保連の資料は「福島県外の保険医療機関等におきましては、公費併用としての請求は出来ません」としています。

県外では公費併用にできないため、窓口でいただいて償還払いですね。

分岐②|その市町村が、一覧に載っているか

ここから社保の話です。

支払基金は、福島県の一部市町村の子ども医療費助成について、被用者保険分の県外受診分の審査支払事務を受託しています。

支払基金が公表している「実施機関番号(福島県)」を見ると、乳幼児医療(法別80)は50市町村

その50件すべてに「対象医療機関等:全国」の印が付いています。令和8年8月現在の一覧です。

福島県は59市町村。残る9市町村は載っていません。

  • 福島市
  • いわき市
  • 相馬市
  • 南相馬市
  • 伊達市
  • 桑折町
  • 矢祭町
  • 新地町
  • 鮫川村

載っていない市町村はどうなるか

9市町村の公式ページを1つずつ確認しました。共通点は、窓口無料になる範囲を市町村が自分で決めていること。

市町村 社保で窓口無料になる範囲
いわき市 市内のみ
福島市 福島市・伊達市・二本松市・本宮市・大玉村・桑折町・国見町・川俣町
伊達市・桑折町 伊達市・伊達郡・福島市
相馬市・南相馬市・新地町 この3市町のみ
矢祭町・鮫川村 なし(県内でも申請が必要)

つまり「県外だからダメ」ではありません。その市町村が決めた範囲の外なら、同じ福島県内でも窓口負担が出ます。

矢祭町と鮫川村にいたっては、社保の場合は県内でも申請が必要な書き方でした。

分岐④|金額で切り替わる自治体がある

一覧に載っている50市町村のうち、7つには金額の条件が付いています。令和8年8月現在です。

  • 川内村
  • 広野町
  • 楢葉町
  • 富岡町
  • 大熊町
  • 双葉町
  • 浪江町

同じ医療機関の入院と入院外を、それぞれ別に数えます。その月が21,000円に届かなければ助成の対象。

21,000円に達した月は、いったん窓口で精算して、あとから町村へ申請してもらう流れです。

受付の時点では決まりません。月の合計なので、後半で21,000円を超えれば、それまで無料で通した分もさかのぼって対象に。

この7つは、月末に金額を見てからレセプトの出し方を決めます。

なお、7つはいずれも原発事故で避難指示が出た地域を含む町村。ひとかたまりなのは偶然ではありません。

分岐⑥|一部負担金等免除証明書があれば、そちらが優先

支払基金のページに、こう書かれています。

被用者保険の被保険者が、一部負担金等免除証明書と福島県子ども医療費助成事業に係る受給者証をお持ちの場合は、一部負担金等免除証明書が優先されますので、ご注意ください。

この証明書は、東日本大震災と原発事故で旧避難指示区域等にお住まいだった患者さんに、加入先の保険者が交付するもの。

見るのは有効期限です。

厚生労働省の事務連絡は、窓口の扱いをこう定めています。

保険医療機関等の窓口においては、有効期限が切れていない免除証明書を提示した免除対象者についてのみ、一部負担金の支払を免除すること。

この免除は区域ごとに段階的に終わっていくもの。有効期限も令和8年7月31日、令和8年8月31日、令和9年3月31日などに分かれます。

優先順位を取り違える事故より、期限切れの証明書で免除してしまう事故のほうが起きやすいです。

分岐④の7自治体と、この証明書の対象地域は重なります。同じ患者さんが両方持ってくる場面が実際にあります。

分岐⑦|法別番号は、福島県のもの

公費負担者番号は8桁。先頭2桁が法別番号、次の2桁が都道府県番号。福島県は07です。

福島県の実施機関番号を見ると、こうなっています。

法別 事業
80 乳幼児医療
81 ひとり親家庭
82 重度心身障害者
83 妊産婦

この対応は福島県のものです。地方単独の医療費助成は、都道府県ごとに法別番号の割り当てが違います。

たとえば東京都の実施機関番号では、82が小児慢性疾患医療。国の小児慢性特定疾病医療費助成(法別52)とは別のものです。

同じ82でも、福島県と東京都で中身が変わります。

もうひとつ大事なのが、こちら。「対象医療機関等:全国」の印が付いている事業は、法別80の50件だけ。81・82・83はすべて県内の医療機関等です。

ひとり親(81)や重度心身障害者(82)の医療証を、県外OKと判定しないよう気をつけたいですね。

レセプト点検で見る分岐|③⑤⑧

分岐③|自院が、併用レセプトを出せるか

一覧に載っていても、それだけでは決まりません。

支払基金のページは、医療機関に対して現物給付での対応と、電子レセプトまたは紙レセプトでの請求をお願いする形になっています。

そのうえで、こう続きます。

いずれの請求においても対応が困難な場合は、従前どおりの、受給者の方が医療機関等の窓口で一部負担金を支払っていただいた後、市町村に申請を行うことにより還付をうける償還払いとなります。

自院が請求できなければ、償還払いのままです。

住民向けの案内にも、同じことが書かれています。

郡山市は「県外の医療機関では使用できない場合があります。その場合は、償還払いでの助成とさせていただきます」

会津若松市も「医療機関等の都合によりお支払いいただくことがあります」としています。

番号が載っているかどうかと、自院の対応可否は別の話。ここが「番号は入口」の意味ですね。

市町村が、住民に別の案内をしていることもある

もうひとつ、自院の事情とは別の要因。

一覧に載っている市町村でも、住民には「県外は払う」と案内していることがあります。

三春町のページには「県外の医療機関と県内の一部の医療機関では、医療費の一部負担があります」と書かれています。

南会津町が自己負担金の支払いが必要な場合として挙げているのも、県外の医療機関で受診したときでした。

どちらも支払基金の一覧に載っている町。それでも住民向けのページは、県外を償還払いとして書いています。

なぜ差が出るのかは、公表資料からは読み取れません。

ただ受付の立場では、患者さんが「うちの町は県外だと払うと聞いています」と言う場合があると知っておくと、話が早いです。

一覧はあくまで支払基金が受託している事実。実際の運用は市町村が決めています。

分岐⑤|国の公費が先

子ども医療費助成は、国の公費負担医療が使える場合はそちらが優先。そのうえで自己負担が生じた時に助成する形です。

福島県のページにも、こう書かれています。

原則として、国の制度による公費負担医療制度が利用できる場合にはそちらを優先し、その際に自己負担額が生じた場合には、当該自己負担額に対して助成します。

だから請求の形が変わります。

支払基金が公表している請求事例には、医保と精神通院医療(21)と子ども医療(80)が重なる場面が1件立っています。

国の公費で子どもへの請求金額が発生しない場合は、80の公費負担者番号を書かず、3者併用ではなく2者併用になる。そう注記されています。

3併で出して返戻、はここで起きますね。

分岐⑧|一覧は、毎年増える

「平成26年3月から全国で使えるようになった」と覚えていると、ここでずれます。

制度が始まったのは平成26年3月診療分から。ただし50市町村が一度に揃ったわけではありません。受託開始年月を追うと、平成26年3月が32市町村。

そこから毎年のように加わり、いちばん新しい塙町は令和7年からでした。

前に調べた記憶で判断しない。一覧は更新されるものですね。

そもそも、やっているのは市町村

福島県の子ども医療費助成は、市町村が実施主体。県は市町村が助成した額を補助する仕組みです。福島県は59市町村。

対象年齢は県内どこも同じで、18歳に達する年度の3月末日まで。平成24年10月1日から、県内全市町村で無料化されました。

そろっているのは年齢まで。制度の名前も、県外で使えるかどうかも、市町村ごとに違います。

問い合わせ先は県ではなく市町村。ここを間違えると、患者さんをたらい回しにしてしまいます。

子ども医療費で県外対応は、確認できた受託一覧では福島県だけ

そもそも、どうして福島県の話だけが出てくるのか。

支払基金は、地方単独の医療費助成について、都道府県ごとに審査支払事務を受託しています。その一覧が「医療費助成事業受託一覧」で、都道府県ごとに公開されているもの。

この一覧には「対象医療機関等」という欄があり、たいていは県内の医療機関等と書かれています。県外で使える形は、そう多くありません。

41都道府県分の一覧を突き合わせてみました。

「全国の医療機関等」の記載があったのは13都府県。ただし中身が違います。

都道府県 全国対応している事業
福島県 乳幼児・子ども医療(法別80)
京都府・大阪府 小児慢性特定疾患の府単独拡大(法別52)
和歌山県・長野県・静岡県 特定疾患の県単独拡大(法別51)
栃木県・愛知県 法別51と52
東京都・埼玉県 法別51と82
広島県・茨城県・香川県 法別51・52ほか

福島県以外は、すべて国の難病や小児慢性の制度を都道府県が独自に広げた分。子ども医療費助成ではありません。

つまり41都道府県分の受託一覧で確認できた範囲では、子ども医療費助成で県外の窓口が対象になっているのは福島県だけです。

なぜ福島県だけなのか。理由は公表資料には示されていません。ただ、全国拡大が始まったのが平成26年3月診療分であることは、頭の片隅に置いておきたい事実です。

よくある質問(FAQ)

Q. 福島県の子ども医療証なら、県外でも窓口無料ですか?

そうとは限りません。保険の種類、市町村、自院が請求できるかで変わります。社保で、市町村が支払基金の一覧に載っていて、自院が併用レセプトを出せる場合に窓口無料。

Q. ほかの都道府県の子ども医療証も、県外で使えますか?

支払基金の受託一覧を41都道府県分照合したところ、子ども医療費助成で「対象医療機関等:全国」となっていたのは福島県だけでした。

ほかの都府県で全国対応している事業は、難病や小児慢性の県単独拡大分です。

Q. 一覧に載っていない市町村は、県外では絶対に使えませんか?

「絶対に」ではありません。載っていない理由は1つに決まらないためです。支払基金へ委託していない場合も、もともと償還払いの場合もあります。その市町村の案内で確認するのが確実ですね。

Q. ひとり親家庭や重度心身障害者の医療証も、県外で使えますか?

「対象医療機関等:全国」の印が付く事業は、乳幼児医療(法別80)だけです。81・82・83は県内の医療機関等が対象になっています。

Q. 21,000円は、その場で判断できますか?

できません。1医療機関の入院・入院外別で見た、その月の合計だからです。月末に確認してから、レセプトの出し方を決めます。

Q. 請求はどこへ出しますか?

窓口では徴収せず、被用者保険と医療費助成の併用レセプトで請求します。

出し先は患者さんの住所地ではなく、自院が所在する都道府県の審査委員会事務局です。

番号は入口、最後は病院のルール

  1. 保険を見る:社保は公費併用/市町村国保は10割給付/国保組合は償還払い
  2. 市町村を見る:59のうち50が一覧に掲載。載っていない9は市町村へ確認
  3. 自院を見る:併用レセプトを出せなければ償還払い。市町村が住民に別の案内をしていることもある
  4. 金額を見る:7自治体は月21,000円で切り替わる。月末に確認
  5. 国の公費を見る:先に使う。2併になることがある
  6. 免除証明書を見る:優先するが、有効期限が切れていたら免除できない
  7. 法別番号を見る:80・81・82の中身は福島県のもの。全国対応は80だけ
  8. 時点を見る:一覧は毎年増える

子ども医療費で県外対応は福島県だけ。ただし「福島県だから」でひとまとめにしない。見るのは番号から。ただし番号は入口。

最後は診療内容と病院のルールで決まりますよ。

公費と病名・薬剤の対応は算定ナビから公式資料の出典つきで確認できます。

一次資料

掲載市町村と金額の条件は令和8年8月現在のものです。制度は市町村ごとに変わり、一覧も更新されます。最新の取扱いは原文と病院のルールでご確認ください。

関連記事

■ 著者プロフィール
3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1院で元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年9月3日