「この算定で、合っているのかな」
レセプトを出すたび、そう手が止まる。
査定や返戻の通知が来ると、少し身構えてしまう。
その気持ち、よくわかります。
私も、そこから始まりました。
この記事は、査定や返戻に「なんとなく」で立ち向かうのを、やめるためのものです。
迷った時に、何を、どの順で確かめればいいか。
その順番を、まるごとお伝えします。
まず1件だけ、実際の場面で
言葉で説明する前に、実際の1件を、最後までお見せするのがいちばん早いです。
結果の欄で気づいて、どこを見て、どう判断したか。
ある月、フェリチンという血液検査が、査定されていました。
最初に浮かんだのは、「また減らされてる」でした。
フェリチンは、当時の審査の傾向で、「月に1回」が目安とされていて、それを超えると、査定されることも。
全国一律の決まりではなく、審査側の取扱いの話です。
でも、医師は医師で、患者さんの状態を見て、必要だと判断して出しています。
診療報酬の目安と、医学的な必要性。
この折り合いを、どうつけるか。
そこが、事務の出番でした。
まず見たのは、カルテと検査結果です。
なぜこの間隔で、この検査をしたのか。
その時の患者さんの状態は、どうだったのか。
そこを、ひとつずつ確かめました。
そのうえで、医師への伝え方は、報告だけで終わらせません。
「この検査、査定されています。
診療報酬の請求では、月1回までとなっておりますので、ご協力よろしくお願いします」
こんなふうに、お願いの形で依頼していました。
この「月1回まで」は、当時の審査で見えていた傾向をもとにした言い方です。
全国共通の決まりがあるわけではありません。
医学的に必要な範囲を確かめながら、過剰な分は見直し、必要な分は理由を残して出す。
その形に、少しずつ近づけました。
同時に、摘要欄にも、手を入れました。
患者さんの状態と、医師がなぜその検査を必要としたのかを、事実のまま、書き添える。
やったことを、並べると。
- ① 査定の通知で気づく
- ② カルテと検査結果を確認する
- ③ 医師に、お願いの形で依頼する
- ④ 摘要に、必要とした理由を事実で書く

むずかしいことは、していません。
順番に確かめて、事実を書いた。
それだけです。
この1件でやっていることが、じつは、この記事の全部です。
落ち着いて、順番に確かめる。
それだけで、次の一手が決まります。
ただ、この「順番に確かめる」の中身が、項目ごとにぜんぶ違います。
それを1つずつ書いたのが、この先です。
読む前と、読んだあと
読む前は、たぶん、こうです。
通知が来るたびに、どきっとする。
その場しのぎで直して、また同じところで、つまずく。
読んだあとは、こう変わります。
通知が来ても、まず種類を分ける。
7つの順で、あやしい所を見つける。
迷った時は、自分で一次資料に当たれます。
査定は運ではなく、先回りできるものになります。
書いている人
総合病院で、医療事務を10年以上やってきました。
今は、転職サービスを通して出会った職場で、フルリモートで算定業務をしています。
最初から、できたわけではありません。
新人の頃は、査定や返戻が来ても自分では分析できず、先輩に質問しては、1つずつ直すだけの毎日。
年数を重ねて、自分で分析して、原因までたどれるようになりました。
分かったことはスタッフに共有し、医師の協力が要る時は、個人的にお願いに行ったり。
医師も集まる会議で、周知したこともあります。
この記事に書いたのは、そうやって身についた確認の順番です。
今は3人の子どもの父として、働き方も選び直してきました。
だからこの記事も、現場でいっぱいいっぱいな時に、すぐ開ける形にしました。
この記事は、本文が約6万字。
図解を62枚入れました。
ただ、頭から全部読む作りにはしていません。
1項目あたり、3分ほど。
迷った時に、迷った項目だけ開く。
辞書のような使い方です。
価格について
この記事は、1,980円。
本を1冊買うくらいの値段です。
迷うたびに、調べ物で手が止まっていた時間が、確認の順番どおりに見れば、短くなっていく。
やり直しの作業に取られていた時間も、減っていく。
返ってくるのは、自分の時間と、落ち着きです。
いちばんの価値は、金額よりも、通知が来た時に、慌てなくなること。
その安心を、持ち帰ってほしいです。
もし、レセプトをまだ担当していない、受付だけ、という段階でしたら、先に、入門の記事のほうが役に立つかもしれません。
一度でも査定や返戻を見たことがあるなら、この記事がいちばん効きます。
目次
全体は、9つの章です。
- 第1章 査定と返戻の基本|通知が来ても、まず何を見るかが分かる
- 第2章 外来の基本|初診か再診か、外来管理加算がつくか。毎日の入口で迷わなくなる
- 第3章 投薬・処方|7種類・205円・剤の数え方で、手が止まらなくなる
- 第4章 検査・画像・病理|「月に何回まで?」に、確認の順番で答えられる
- 第5章 処置|面積・経過・まとめ算定。数え方のつまずきが減る
- 第6章 摘要欄で事実を補う|そのまま写せるコメントの型が手に入る
- 第7章 令和8年の改定まわり|去年のままで出す事故を防げる
- 第8章 窓口とお金まわり|窓口の「これ、どうします?」に慌てなくなる
- 第9章 査定・返戻の後始末|査定で終わらせず、再審査までの動き方が分かる
ここから、本文に入ります。
第1章の途中までは、このまま無料で読めます。
中心の「7つの確認順」から先が、有料の本編です。
では、始めますね。
第1章 査定と返戻の基本
【全体の流れ】1-1 レセプトを出したあと ― 何が起きるかを、1枚で
「レセプトを出したあと、これって、どうなっていくんだろ、、、」
1年目のころ、いちばん見えなかったのが、ここでした。
出したあとの流れが分かると、通知が来ても、まず何を見るかで迷わずにすみます。
流れだけ、先に書きますね。
レセプトは、
出す
↓
審査される
↓
問題なければ支払い
↓
問題があれば、査定(減点)か返戻(差し戻し)
↓
その情報が届く
↓
こちらが対応する
ここまでが、毎月のくり返しです。
【全体の流れ】出したあとの流れ
レセプトは、毎月まとめて、審査支払機関に提出します。
提出先は、保険の種類で分かれます。
社保のレセプトは支払基金、国保のレセプトは国保連。
そこで、中身が審査されます。
問題がなければ、そのまま支払いへ。
問題があれば、2つのどちらか。
点数が減らされる査定か、一度突き返される返戻です。
そして、その結果が、こちらに情報として届きます。
増減点連絡書(査定の通知)や、返戻の通知といった形で。
そこから、こちらの番。
審査というのは、出したレセプトの中身を、人と仕組みの両方で見ていく作業です。
点数と病名は合っているか。
回数や組み合わせに無理はないか。
そこを一件ずつ見られます。
この考え方の出どころは、厚労省の保険診療の理解のために 令和8年度版です。
【全体の流れ】届いた情報で、まず見る欄
では、届いた通知の、どこを見るか。
見るのは、この4つです。
- どのレセプトの分か(患者・月)
- どの項目か(何の点数か)
- 査定か、返戻か
- いくら減ったか、なぜか
この4つが理解できれば、あとは動くだけ。
最初は難しく見える通知も、見る場所さえ決まっていれば、上から順に読むだけです。
とくに、査定か返戻か。
ここを最初に見分けると、そのあとの動きが、まるごと決まります。
金額よりも、種類が先!
ここは覚えておいてください。
【全体の流れ】慌てなくて、大丈夫
査定や返戻は、特別なことではありません。
レセプトを担当していれば、いつかは目にします。
自分だけの失敗、というものでもありません。
同じところで2回減らされないように、次に生かせば十分です。
1年目でも、5年目でも、査定や返戻は届きます。
ベテランでも、ゼロにはなりません。
だからこそ、来た時にどう動くか。
そこを知っておくと、手が止まらずにすみます。
【全体の流れ】実際は、こう動きます
情報が届いたら、まず、査定なのか返戻なのかを分けます。
この2つは、似ていて、やることが違うからです。
その違いは、このあとで。
分けたら、次は原因。
なぜ減ったのか、なぜ戻ってきたのか。
そこを落ち着いて探っていけば、次にやることが決まります。
返戻なら、直して出し直す。
査定なら、根拠を確かめて、再審査の余地を判断します。
まずは、この流れの全体像を持っておく。
それだけで、通知が届いた時に、手が止まる時間が短くなります。
ここから先は、査定を減らすための、具体的な確認の順番。
まずは、査定と返戻をきちんと分けるところから。
次は、その違いから見ていきますね。

💬 現場の本音
自分が計算したレセプトが、査定や返戻になっていないか。
それが気になり始めたのは、1年目に入って、計算にやっと慣れてきた頃でした。
正直、新人さんが査定や返戻まで気にする余裕は、ありません。
頭の片隅に、「そういうものがある」と置いておくだけで、大丈夫です。
まずは、目の前の計算を、正確に。
そのうえで、先輩から査定や返戻の共有があったら、忘れないようにメモしておく。
それだけで、十分な一歩です。
【全体の流れ】迷ったら、この止まり方で
- 🔴 通知が届いて焦る → まず4欄(患者月・項目・査定か返戻か・いくらなぜ)を見る
- 🟡 査定か返戻か、を先に分ける
- 🔵 分けたら、原因を落ち着いて探る
【査定・返戻】1-2 査定と返戻は別もの ― 10秒で仕分けて、動く
「査定も返戻も、どっちも“うまくいかなかった”という感じで、同じに見えるんだよね、、、」
この2つは、見た目は似ていても、まったく別ものです。
10秒で仕分けられると、そのあとの動きが、ぐっと早くなりますね。
答えから、いきますね。
査定は、点数が減らされること。
レセプトは、受理されている。
返戻は、丸ごと突き返されること。
受理されず、戻ってくる。
この2つは、やることが逆になる。
【査定】査定 ― 点数が減る
査定は、審査で一部の点数が認められず、減らされた状態です。
大事なのは、レセプト自体は通っている、という点です。
丸ごと戻ってきたわけではありません。
一部が、減点された。
その減った分に納得がいかなければ、根拠をつけて、もう一度見てもらう道があります。
審査や請求の考え方は、厚労省の保険診療の理解のために 令和8年度版にまとまっています。
【返戻】返戻 ― 突き返される
返戻は、中身に不備があって、レセプトが一度戻ってきた状態です。
こちらは、受理されていません。
だから、やることははっきりしています。
戻ってきた理由を直して、もう一度、出す。
これが、返戻への対応です。
【査定・返戻】実例で、分けてみる
ある検査の点数が、病名と合わないと見られて、その分だけ減らされた。
レセプトは通っている。
これが、査定。
一方、保険の記号番号が違っていて、レセプトが丸ごと戻ってきた。
受理されていない。
これが、返戻です。
同じ「うまくいかなかった」でも、中身は、まるで違います。
【査定・返戻】10秒で、仕分ける
通知が届いたら、見るのは、たった一点。
点数が「減った」のか。
レセプトが「戻ってきた」のか。
減っていれば査定、戻ってきていれば返戻。
この一点だけで、まず仕分け。
【査定・返戻】なぜ、分けるのが大事か
それは、やることが逆になるからです。
査定は、通知と記録から、再審査の余地を確かめる判断。
返戻は、直して出し直す作業。
向かう先が、逆です。
ここを混同すると、動きが、ちぐはぐになります。
だから、まず種類。
それから、中身です。
【査定・返戻】実際は、こう動きます
通知が来たら、まず、査定か返戻かを判定します。
そのうえで、査定なら、再審査の余地を考える。
返戻なら、直して再請求。
種類がはっきりすれば、あとは決まったとおりに動くだけ。
迷いは、たいてい「どっちだろう」で止まった時に生まれます。
だから、10秒の仕分けが、いちばんの近道です。
査定と返戻を分けられると、次の疑問が出てきます。
そもそも、なぜ査定は起きるのか。
その原因には、じつはよくある型があります。
次は、その3つから。

【査定・返戻】迷ったら、この止まり方で
- 🔴 どう動くか迷う → まず、査定か返戻かを見分ける
- 🟡 点数が減った(査定)か、丸ごと戻ってきた(返戻)か
- 🔵 査定=再審査の余地を判断/返戻=直して再請求
【査定】1-3 査定の3大原因 ― あやしい所は、だいたい3つ
「査定って、どういう時に起きるんだろ。
何かパターンがあるのかな、、、」
あります。
査定には、よくある型が3つ。
ここを頭に置いておくと、出す前に、あやしい所に気づけますね。
先に、答えだけ置いておきます。
査定の大きな原因は、3つ。
病名まわり、回数まわり、組み合わせまわり。
この3つを頭に置くと、あやしい所が、見えてくる。
【査定・病名】① 病名まわり
いちばん多いのが、これです。
算定した検査や薬と、カルテに記録された診断・所見が、合っていない。
そう見られた時に、査定されます。
ここで気をつけたいのは、足りないからと、病名を後から作らないことです。
それは、やってはいけない側。
確かめるのは、カルテにその事実があるか、です。
たとえば、痛み止めと一緒に胃薬を出した時。
胃を守るために出した、とカルテにあれば、摘要欄で説明する根拠になります。
薬の適応や算定の要件は、それとは別に確かめる。
ない病名をあとから付けるのとは、向きが、逆です。
この戒めは、厚労省の保険診療の理解のために 令和8年度版にある考え方です。
【査定・回数】② 回数・量まわり
次が、回数や量。
月に取れる回数の上限を超えた。
1回の量が、多すぎると見られた。
そういう時に、超えた分が減らされます。
「いつもより多いな」と感じた時が、確かめどきです。
【査定・組み合わせ】③ 組み合わせまわり
3つめが、組み合わせです。
一緒には取れないものを、両方つけてしまった。
あるいは、ほかの点数に含まれている(包括)ものを、別に取ってしまった。
この取り合わせのずれも、査定のもとになります。
【査定】3つに共通するのは
この3つに共通するのは、「決まりから外れている」と見られる、という点です。
逆に言えば、決まりを先に確かめられれば、たいていは防げます。
査定は、運ではありません。
型があるから、先回りができます。
【査定】査定通知の言葉と、3つの原因
査定の通知には、理由を表す言葉が入ります。
「適応と認められない」なら、病名まわり。
「過剰」なら、回数や量。
「重複」なら、組み合わせ。
言葉と原因が結びつくと、通知が、ぐっと読みやすくなる。
【査定】実際は、こう使います
出す前に、この3つの目でレセプトを見ます。
病名とカルテの記録は、合っているか。
回数や量は、多すぎないか。
組み合わせに、無理はないか。
どこかで「あやしいな」と感じたら、そこで止まる。
その止まる勇気については、このあとで見ていきます。
そして、実際に何をどの順で確かめるか。
その具体的な順番は、このあとで。

【査定】迷ったら、この止まり方で
- 🔴 査定が不安 → 病名・回数量・組み合わせ、の3つで見る
- 🟡 決まりから外れていないか(病名は事実か・上限内か・取り合わせは合うか)
- 🔵 あやしければ止まって確認、大丈夫なら出す
【心構え】1-4 止まる勇気 ― あやしい時に、手を止められる人が強い
「これで合ってるのかな、って手が止まる時があります。
でも、いちいち聞くのも、気が引けてしまって」
その「手が止まる感覚」が、じつは、いちばんの武器です。
止まれることが、査定を減らす、いちばんの力になります。
まず、答えから。
査定を減らすのは、知識がいちばん多い人ではない。
あやしい時に、止まれる人。
止まって、確認する。
分からなければ、聞く。
この止まる勇気が、いちばんの守り。
【心構え】止まるのは、弱さではない
迷ったまま、えいっと出す。
それより、一度手を止めて、確かめてから出す。
どちらが強いかは、はっきりしています。
ベテランほど、あやしい時に、すっと手を止めます。
自信がないから、ではありません。
止まったほうが、結局早くて確実だと、知っているからです。
【確認】止まったら、確認へ
ただし、止まるだけでは、半分です。
止まって、決まりを見る。
まず、指導者や先輩に聞く。
その指示を受けて、必要なら医師に確認する。
止まる、と、確認する。
この2つが、セットです。
止まった先に、確認がある。
そこまでで、ひとつの動きです。
医師に確認する、という役割の大切さは、厚労省の保険診療の理解のためにでも説明されています。
【心構え】聞くのは、恥ずかしくない
「いちいち聞くのは、気が引ける」
その気持ちも、わかりますよね。
でも、あいまいなまま出して、返戻や査定になるほうが、あとの手間も、周りの手間も、ずっと大きくなります。
先に、ひとこと聞く。
それは、自分のためでもあり、チームのためでもあります。
【心構え】ここまでが、全体の流れです
レセプトを出したあとの流れを知り、査定と返戻を分け、査定の3つの原因を知り、あやしい時には、止まる。
ここまでが、査定と返戻の全体の流れです。
この流れが頭にあれば、通知が来ても、自分が今どの段階にいるかが、わかります。
もう、やみくもにあわてることは、ありません。
【心構え】この先は、具体的な確認の順番へ
では、実際に。
どこで止まり、何を、どの順番で確認すればいいのか。
その具体的な確認の順番を、この先で、ひとつずつお伝えしていきます。
迷った時に、上から当てていけば、あやしい所にたどりつく。
そんな、7つの確認の順です。
迷った時に戻ってくる道具として、使ってください。

💬 現場の本音
検査の回数や件数は、医師が医学的な理由で判断しています。
だから、多く見えても、私が事務の判断で消すことはしませんでした。
そういう時は、止まって、医師に「なぜ必要だったか」を症状詳記(必要性のコメント)として書いてもらえないか、お願いしていました。
届出も、思い込みで進めず、担当者にリストをもらいます。
止まって、正しい人に確認する。
それが、私のやり方でした。
【心構え】迷ったら、この止まり方で
- 🔴 あやしいと感じたら、そのまま出さない
- 🟡 決まりを見る→指導者や先輩に聞く→その指示を受けて、必要なら医師
- 🔵 確かめて大丈夫なら出す/不安が残るなら、もう一歩確認