「4回目だから、もっと安くなるはずですよね」
会計でこう言われて、どこから数えるのか分からず固まった。そんな場面は珍しくありません。

高額療養費の多数回該当です。しくみの名前は知っていても、いざ「何回目ですか」と聞かれた瞬間に、どの月から数え始めればいいのかが分からなくなる。

ここが、いちばんのつまずきどころですね。

会計の窓口には、名前だけは知っているのに実際に聞かれると答えに詰まる制度がいくつもあって、多数回該当はその代表格だと思います。

この記事でわかること
- 多数回該当を数える範囲(当月を含む直近12か月)
- 4回目が「いつから」になるかを、月の並びで見る例
- 数える範囲が毎月ずれる、という一番の落とし穴
- 入院と外来、保険が変わった時、70歳以上の扱い

結論から言うと、当月を含む直近12か月の間に、上限額まで負担した月が3回あれば、その次から負担が下がります。年度でも、1月から12月でもありません。

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この記事を書いた人
ゆう|総合病院3院で医療事務10年以上|元採用担当3年|現フルリモート医療事務|3児パパ

多数回該当の数え方|3回たまると、4回目から下がる

先に、答えだけ。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の説明が、そのまま答えです。

療養を受けた月以前の1年間に、3か月以上の高額療養費の支給を受けた場合(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)には、4か月目から「多数回該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます

出典:全国健康保険協会「高額療養費」(2026年8月28日確認)

ポイントは2つ。

  1. 数える範囲は「療養を受けた月以前の1年間」=今月を含めて、さかのぼって12か月
  2. 数えるのは、上限額まで負担した月=回数が3つたまると、次の月から下がる

多数回該当の数え方。今月を含む直近12か月の間に、上限額まで負担した月が3回あれば、4回目から自己負担限度額が下がる

覚えるのは、この2つ。

窓口で聞かれた時は、短くこう返すだけで足ります。

💬 「今月を含めた1年の間に、上限額までのお支払いが3回あると、4回目から下がるしくみです」

回数そのものは、窓口だけでは確かめられない場面があります。そこは、後半で。

例で見る|5月・6月・7月に届いたら、8月から下がる

言葉だけだと入りにくいところ。ひとりの患者さんの月の動きを、5月から順番に追いかけてみますね。

受診 その月の結果 回数
5月 入院 上限額まで負担 1回目
6月 外来 上限額まで負担 2回目
7月 外来 上限額まで負担 3回目
8月 ここから軽減 4回目

5月・6月・7月で3回。だから8月が4回目になり、この月から上限額が下がります。

多数回該当の例。5月に入院、6月と7月に外来でそれぞれ上限額まで負担すると3回になり、8月が4回目として軽減される

上限額に届かなかった月は、間に何回受診していても数に入りません。受診した回数ではなく、上限額まで負担した月の数

ここを取り違えると、患者さんへの説明が丸ごとずれてしまいます。

一番の落とし穴|数える12か月は、毎月ずれる

ここからが本題です。

多数回該当でいちばん間違えやすいのが、範囲の区切り方でした。

年度で区切るわけでも、1月から12月で区切るわけでもありません。協会けんぽの文章にあるとおり、基準は「療養を受けた月」

つまり、その月から見た1年です。

だから翌月になると、数える12か月も1か月ぶん動きます。古い月は、順番に範囲から外れていく形。

動く枠だと思っておくと、覚えやすいですよ。

8月に窓口で数えた3回と、9月に数え直した3回が同じとはかぎらないので、前の月の答えをそのまま使い回すと、思わぬところでずれてしまいます。

数える12か月は毎月ずれる。8月時点の範囲と9月時点の範囲を並べると、1か月ぶん右にずれて古い月が範囲から外れる

ここが伝わっていないと、「去年もこんなに払ったのに」という声にうまく答えられません。

💬 「数える1年は、その月から1年さかのぼる形です。月が変わると、数える範囲も1か月ずつ動きます」

「1回」と数えるのは、どんな月か

数える対象がはっきりすると、迷いが減ります。3つに分けて整理しますね。

上限額まで負担した月

その月の負担が上限額に届いた月。これが1回。

同じ月に3回受診しても、5回受診しても、その月は1回です。数える単位は受診でなく月だからです。

その月に何度通っても、上限額に届いてさえいれば1回、届かなければ0回。受診した回数を数えていると、必ずずれます。

払い戻しがなかった月も入る

見落とされやすいのが、ここ。

窓口で最初から上限額までしか払わなかった月も、回数に入ります。協会けんぽの説明にも「限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む」と書かれています。

あとから払い戻しを受けた月だけを数えるわけではありません。

1回と数える月。上限額まで負担した月が1回で、同じ月に何度受診しても1回。窓口で上限額までを払った月も含み、上限に届かなかった月は数えない

月をまたいだ分は、合算されない

月末から月初にかけての入院でも、計算は月ごとに切り替わるからです。

「入院は続いているのに、なぜ2か月に分かれるのか」と聞かれる場面。ここは、高額療養費が月単位のしくみだから、と説明できます。

入院と外来|会計は別々でも、月の数え方では分けない

けっこう聞かれるところです。

窓口の会計は、入院と外来で別々に計算します。協会けんぽも「同じ医療機関でも『医科入院』『医科外来』『歯科入院』『歯科外来』はそれぞれ別に計算します」と示しています。

上限額も、それぞれに当てはめる形。

では、多数回該当の回数はどうか。

入院で上限額に届いた月も、外来で届いた月も、同じ1回です。さきほどの例で5月が入院、6月と7月が外来でも、3回として並びました。

入院と外来の扱い。窓口の会計は入院と外来で別々に計算するが、多数回該当の回数を数えるときは、どちらで上限額に届いても同じ1回として数える

窓口では入院と外来をそれぞれ別に計算して、それぞれに上限額を当てはめていくので、同じ月でも会計は2本立てになりますが、月の数え方だけは1本にまとまります。

会計の計算と、月の数え方。この2つは別の話、と切り分けておくと混乱しません。

なお70歳未満の場合、同じ月に複数の医療機関の分を合算するには、それぞれ21,000円以上であることが条件です。70歳以上は、金額にかかわらず合算できます。

保険が変わると、回数は数え直し

転職・退職のあとに、いちばん誤解が生まれるところ。

協会けんぽは、2つの条件をはっきり書いていますね。

多数回該当は同一保険者での療養に適用されます。国民健康保険や健康保険組合から協会けんぽに加入した場合など、保険者が変わったときは多数該当の月数に通算されません

多数回該当は同一被保険者で適用されます。退職して被保険者から被扶養者に変わった場合などは、多数回該当の月数に通算されません

7月まで国民健康保険で3回、8月に転職して協会けんぽへ。この場合、8月は1回目から数え直しになります。

前の保険で何回積み上げていても、そこは引き継がれません。

国民健康保険から協会けんぽへ、あるいは健康保険組合から国民健康保険へと切り替わった時は、それまでに積み上げた回数がリセットされる決まりになっているからです。

転職や退職のあとに「もう3回払ったのに」と言われる場面は、たいていこれ。

保険が変わると回数は数え直し。国民健康保険で3回あっても、転職して協会けんぽに変わると、その月から1回目として数え直す

被保険者から被扶養者に変わった時も同じ扱いです。治療の中身ではなく、誰の・どの保険での回数かで決まります。

💬 「保険が切り替わったあとは、回数も新しい保険で数え直しになります。くわしくは、加入先の保険者にご確認いただけますか」

4回目からの金額は、2026年8月からも据え置き

2026年8月に月の上限額が引き上げられました。ただ、多数回該当の金額は変わっていません。

厚生労働省は見直しのポイントとして「長期に継続して治療を受けられている方の経済的負担を増加させない」と示しています。

長く治療を続けている人の負担は増やさない、という考え方で据え置かれた形です。

70歳未満の金額は、次のとおり。

所得区分(年収の目安) 月の上限額 4回目から
約1,160万円〜 270,300円+(医療費−901,000円)×1% 140,100円
約770〜1,160万円 179,100円+(医療費−597,000円)×1% 93,000円
約370〜770万円 85,800円+(医療費−286,000円)×1% 44,400円
〜約370万円 61,500円 44,400円
住民税非課税 36,900円 24,600円

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(2026年8月28日確認・令和8年8月〜令和9年7月の区分)

2026年8月からの70歳未満の自己負担限度額と、4回目からの金額。年収約370万円から約770万円の区分は月85,800円に1%を加えた額で、4回目から44,400円

年収約370万円から約770万円の区分なら、85,800円+1% が、4回目から44,400円

数字が動いたのは上限額のほうだけ、と覚えておくと説明しやすくなります。

区分が決まる基準は、加入している保険で違います。健康保険なら標準報酬月額、国民健康保険なら旧ただし書き所得。表の年収は、あくまで目安です。

窓口で年収を尋ねる必要はありません。

70歳以上は、2026年8月に扱いが変わりました

ここは、去年までの知識のままだと間違えます。

70歳以上の住民税非課税の区分には、これまで多数回該当がありませんでした。

2026年8月からは、月の上限額25,700円に対して4回目から24,600円が設定されています。

70歳以上の多数回該当の変化。住民税非課税の区分は2026年7月まで多数回該当がなかったが、8月から月25,700円に対して4回目から24,600円が設定された。所得が一定以下の区分には今もない

一方、70歳以上でも所得が一定以下の区分(低所得者Ⅰ)には、今も多数回該当はありません。同じ「非課税」でも、扱いが分かれます。

ややこしいところですね。

もうひとつ、細かいけれど実務で効くところ。70歳以上75歳未満の人が、外来の限度額(外来特例)で軽減を受けた回数は、多数回該当の回数に数えません

協会けんぽが明記しています。

年齢と区分で条件が変わるので、迷った時は加入先の保険者に確認するのが確実です。

回数を管理しているのは、加入先の保険者

最後に、窓口の現実的なところを。

多数回該当の回数は、病院の窓口では確かめられない場面があります。

自分の病院で払った分だけを見ても答えは出ませんし、ほかの病院や薬局で上限額に届いた月も含めて数えるので、窓口の画面だけで判断すると食い違いが起きてしまいます。

聞かれた時に返せるのは、数え方と、確認先の2つ。

💬 「何回目にあたるかは、加入されている保険者で管理されています。そちらにお問い合わせいただけますか」

その場で回数を断定しないこと。ここが、いちばん大事な線です。

保険証・医療証まわりの基本は、無料の受付で固まらない制度早見表PDFにもまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 4回目は「4か月連続」でなくてもいいですか?

連続している必要はありません。当月を含む直近12か月の中に3回あれば、次が4回目です。

間の月が空いていても、範囲の中に入っていれば数えますよ。

Q. 窓口で上限額までしか払っていない月も、回数に入りますか?

入ります。協会けんぽの説明でも「限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む」とされています。

払い戻しを受けた月だけを数えるわけではない、というところ。

Q. 保険が変わった場合はどうなりますか?

保険者が変わると、回数は通算されません。新しい保険での1回目から数え直しになります。

退職して被保険者から被扶養者に変わった場合も、同じ扱いです。

Q. 入院と外来で、上限額に届いた月が別々にあります。通算できますか?

できます。入院で届いた月も、外来で届いた月も、同じ1回として数えます。

窓口の会計を別々に計算することとは、別の話です。

Q. 同じ月に何度も受診した場合は、何回になりますか?

その月で1回です。数える単位は受診回数ではなく、月。

月をまたいだ治療は、月ごとに区切って計算する決まりです。

Q. 70歳以上でも多数回該当はありますか?

区分によって分かれます。2026年8月から住民税非課税の区分にも設定されましたが、所得が一定以下の区分には今もありません。

70歳以上75歳未満の外来の限度額で軽減された回数は、数に入れない扱いです。

Q. 患者さんに「今何回目ですか」と聞かれたら、何と答えますか?

回数は加入先の保険者が管理しています。数え方だけをお伝えして、確認先をご案内するのが安全です。

その場の推測で回数を答えると、あとで食い違います。

まとめ|3つだけ覚えれば、窓口で答えられる

  1. 数える範囲は、当月を含む直近12か月:年度でも1月から12月でもなく、毎月ずれる
  2. 数えるのは、上限額まで負担した月:受診回数ではなく月の数。窓口で上限額までを払った月も入る
  3. 保険が変わったら数え直し:同じ保険者・同じ被保険者での回数だけを通算する

多数回該当は、知らないと患者さんが損をするしくみです。回数まで言い切れないことはあります。それでも、数え方を説明できる人が窓口にいるだけで、患者さんの不安はずいぶん減ります。

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■ 著者プロフィール
総合病院3院で医療事務10年以上、うち1院で元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年8月28日