傷病手当金とは?金額・期間・条件を医療事務がやさしく解説
病気やケガで会社を長く休むことになった時、いちばん不安になるのは「その間の生活費」です。
治療費そのものは、医療費が高額になった時に戻ってくる「高額療養費制度」で抑えられます。
でも、働けない間の給料は、どうなるのでしょうか。
そこで助けになるのが「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」です。
この記事でわかること
- 傷病手当金とは何か(誰がもらえる制度か)
- もらえる金額(給料の約3分の2)
- もらえる期間(通算1年6か月)
- もらえる4つの条件
- 申請の流れと、見落としやすい注意点
- よくある質問(退職後・高額療養費との違いなど)
【この記事を書いた人】ゆう
総合病院で医療事務として10年以上、受付や会計の現場に立ってきました。元採用担当(3年)。3児の父です。
窓口で「治療費は何とかなっても、働けない間の生活が不安」という声を、何度も聞いてきました。その経験から、できるだけやさしい言葉で制度を解説します。
※本記事は2026年5月時点の協会けんぽ(全国健康保険協会)の情報をもとにしています。
傷病手当金とは
傷病手当金とは、病気やケガで仕事を休み、その間の給料を受け取れない時に、健康保険から生活費を補ってもらえる制度です。
かんたんに言うと、「働けない間の収入を、一定割合まで支えてくれるお金」です。
対象になるのは、会社員などの「健康保険(被用者保険)」に加入している人です。
自営業やフリーランスが加入する「国民健康保険」には、原則としてこの制度はありません。ここは多くの人が見落とすところです。
もらえる金額は「給料の約3分の2」
傷病手当金の金額は、おおまかに言うと給料の約3分の2です。
正確な1日あたりの計算は、協会けんぽの公式では次のように決められています。
1日あたりの金額=
支給開始日以前の継続した12か月間の「標準報酬月額」を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2
「標準報酬月額」とは、毎月の給料をもとに決められる、社会保険の計算用の金額のことです。
むずかしく感じるかもしれませんが、「ふだんの給料の約3分の2が、休んだ日数分もらえる」と覚えておけば十分です。
たとえば、ふだんの給料が月30万円ほどの人なら、1日あたりおよそ6,600円前後が目安になります。
なお、健康保険に加入してから12か月に満たない人は、計算方法が少し変わります。その場合は「自分の加入期間の平均額」と「全加入者の平均額(2025年4月1日以降は32万円)」の、低いほうを使って計算します。
もらえる期間は「通算で1年6か月」
傷病手当金がもらえる期間は、同じ病気やケガについて、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
ここでポイントになるのが「通算」という言葉です。
以前は「支給開始から1年6か月」という連続した数え方でした。
2022年1月の改正で、実際に支給された日を足し合わせて1年6か月分という数え方に変わりました。
つまり、途中で体調が戻って働ける時期があっても、その期間は1年6か月のカウントから外れます。
休んだり戻ったりをくり返す病気の人にとっては、ありがたい仕組みになりました。
もらえる4つの条件
傷病手当金を受け取るには、次の4つをすべて満たす必要があります。
条件① 仕事以外の病気やケガで療養していること
仕事中や通勤中のケガは「労災保険」の対象になるため、傷病手当金の対象外です。
あくまで、仕事とは関係のない病気やケガが対象です。
条件② 仕事に就けない状態であること
これまでやっていた仕事ができない状態かどうかで判断されます。
自己判断ではなく、医師の意見をもとに確認されます。
条件③ 連続する3日を含めて、4日以上仕事を休んでいること
ここが少しややこしい部分です。
最初の連続した3日間は「待期(たいき)」と呼ばれ、傷病手当金は支給されません。
この3日間が終わったあとの、4日目から支給の対象になります。
なお、この最初の3日間には、土日などの休日や有給休暇も含めて数えます。
条件④ 休んでいる間に給料が支払われていないこと
休んでいる間に給料が出ている場合は、傷病手当金は支給されません。
ただし、給料が一部だけ支払われていて、その額が傷病手当金より少ない場合は、差額が支給されます。
申請の流れと注意点
傷病手当金は、自分で申請しないともらえません。自動では振り込まれません。
おおまかな流れは次のとおりです。
- 勤務先に、傷病手当金を申請したいと伝える
- 申請書(傷病手当金支給申請書)を用意する
- 申請書のうち「療養担当者(医師)が記入する欄」を、病院で書いてもらう
- 勤務先に「事業主が記入する欄」を書いてもらう
- 加入している健康保険(協会けんぽなど)へ提出する
ここでよくある見落としを、医療事務の立場から3つお伝えします。
① 申請しないともらえない
制度を知らずに、休んだだけで終わってしまう人がいます。まず勤務先に相談するのが第一歩です。② 退職後ももらえる場合がある
退職日までに健康保険の加入が続けて1年以上あり、退職時に傷病手当金を受けている(または受ける条件を満たしている)場合は、退職後も残りの期間を受け取れます。なお、この「1年以上」には、任意継続や国民健康保険の期間は含まれません。③ 高額療養費とは別の制度
医療費が戻る「高額療養費制度」と、生活費を補う「傷病手当金」は別の制度です。両方を同時に使えることが多いので、片方だけで満足しないことが大切です。
医療費そのものを抑える「高額療養費制度」については、こちらの記事でくわしく解説しています。
▷ 医療費が高額になったら?高額療養費制度のしくみと申請方法
また、1年間の医療費が多くかかった年は、確定申告で税金が戻る「医療費控除」も使えます。
出産を控えている場合は、50万円が支給される「出産育児一時金」もあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 傷病手当金は、いつから振り込まれますか?
申請書を提出してから、審査を経て支給されます。
初回は内容の確認に時間がかかることが多く、申請から振り込みまで数週間〜1か月以上かかる場合があります。早めの申請がおすすめです。
Q2. パートやアルバイトでももらえますか?
勤務先の健康保険(被用者保険)に加入していれば、雇用形態に関わらず対象になります。
扶養に入っている人や、国民健康保険の人は原則対象外です。
Q3. うつ病など、心の病気でも対象になりますか?
仕事以外の事由による病気で、医師が「働けない」と判断すれば、心の病気も対象になり得ます。
Q4. 高額療養費制度とは何が違いますか?
高額療養費制度は「かかった医療費」を一定額まで戻す制度です。
傷病手当金は「働けない間の生活費」を補う制度です。目的が違うため、両方を利用できる場合が多いです。
Q5. 自営業(国民健康保険)でももらえますか?
国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度はありません。
会社員などが加入する健康保険(被用者保険)が対象です。
Q6. 申請に期限はありますか?
傷病手当金を受ける権利には時効があり、働けなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。早めの申請を心がけましょう。
まとめ:制度を知っておくことが、いちばんの備え
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった時に、給料の約3分の2を、通算1年6か月まで支えてくれる制度です。
大切なのは、「申請しないともらえない」ということ。
そして、医療費を抑える高額療養費とは別物だということです。
元気なうちにこうした制度を知っておくと、いざという時に落ち着いて動けます。
自分のためにも、家族のためにも、頭の片隅に入れておいてほしい制度です。
働き方そのものに不安を感じているなら、体に負担の少ない働き方を選択肢に入れてみるのも一つの方法です。医療・介護の求人を探せるサービスもあります。
【参考】医療・介護の求人サイト
医療事務をはじめ、医療・介護の求人を探せます。
※下記は広告(PR)リンクです。
関連記事
お金の制度は、組み合わせて使うと「知らずに損」がなくなります。あわせて読んでおくと安心です。
- 高額療養費とは?2026年8月改正と月額上限を医療事務が解説
- 出産育児一時金は1児50万円|直接支払制度・差額申請の流れ
- 医療費控除は年10万円超で還付|計算式と確定申告のやり方
- 限度額適用認定証|マイナ保険証なら不要・申請手順
- 医療費の領収書を捨てる前に|医療費控除・高額療養費まで現役医療事務が解説
出典・参考
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/ - 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金|給付と手続き」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
※本記事は2026年5月時点の情報です。金額や条件は、加入している健康保険によって異なる場合があります。実際の申請にあたっては、勤務先または加入している健康保険へご確認ください。
最終更新日:2026年5月30日