医療費控除とは?10万円の壁・対象・申請方法を医療事務が解説

「医療費がたくさんかかった年は、税金が戻る」
そんな話を聞いたことはあっても、やり方がわからず、そのままにしている人は多いです。

その制度が「医療費控除」です。
正しく申告すれば、払いすぎた税金が戻ってきます。

この記事でわかること
- 医療費控除とは何か(どんな制度か)
- 「10万円の壁」の正しい意味
- 控除額の計算方法(具体例つき)
- 対象になる費用・ならない費用
- 確定申告のやり方と必要なもの
- よくある質問(家族分・高額療養費との関係など)


【この記事を書いた人】ゆう
総合病院で医療事務として10年以上、受付や会計の現場に立ってきました。元採用担当(3年)。3児の父です。
窓口で「領収書はとっておいたほうがいいですか?」とよく聞かれます。その答えになる制度を、やさしくまとめました。
※本記事は2026年5月時点の国税庁の情報をもとにしています。


医療費控除とは

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定の額を超えたとき、その分だけ所得から差し引いて、税金を軽くしてもらえる制度です。

かんたんに言うと、「医療費がかさんだ年は、税金が戻ってくる仕組み」です。

対象になるのは、自分だけでなく、生計をともにする家族の医療費もまとめて合算できます。
夫婦・子ども・離れて暮らす仕送り中の家族なども含められる場合があります。


「10万円の壁」の正しい意味

医療費控除は「10万円を超えた分」が対象、とよく言われます。
これはおおむね正しいのですが、正確には少し違います。

計算式は、国税庁の公式では次のとおりです。

医療費控除額=
(1年間に支払った医療費)-(保険金などで補填された金額)-(10万円)

ここで大事なのが、最後の「10万円」の部分です。

総所得金額が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額の5%」を引きます。

たとえば総所得が150万円の人なら、150万円 × 5% = 7万5千円。
つまり、医療費が7万5千円を超えれば対象になります。

収入が少ない人ほど、10万円より低いラインで使えるということです。パートやアルバイトの人も、あきらめずに計算してみてください。

なお、控除できる金額の上限は200万円です。


控除額の計算(具体例)

言葉だけだとわかりにくいので、具体例で見てみます。

会社員で総所得が400万円、1年間の医療費が25万円、保険金などの補填が3万円だったケースです。

25万円(支払った医療費)
-3万円(補填された金額)
-10万円
= 12万円(医療費控除額)

この12万円が所得から差し引かれます。
税金そのものが12万円戻るわけではなく、「12万円分に対する税率分」が軽くなるイメージです。

所得税率が10%の人なら、約1万2千円。住民税とあわせると、さらに戻る分が増えます。


対象になる費用・ならない費用

ここが多くの人がつまずくところです。
国税庁の基準をもとに整理します。

対象になるもの

  • 病院や歯科の診療・治療費
  • 治療のための医薬品(市販の風邪薬なども治療目的ならOK)
  • 入院費用
  • 通院のための電車・バス代(公共交通機関)
  • 病状によりやむを得ないタクシー代
  • 出産費用
  • はり・きゅう・あんま等の施術費(治療目的のもの)

対象にならないもの

  • 美容目的の整形
  • 健康診断・人間ドックの費用(※病気が見つかり治療した場合は対象)
  • 予防のためのビタミン剤・健康食品
  • 自家用車で通院した時のガソリン代・駐車場代
  • 予防接種

「治療のためか、予防・美容のためか」が分かれ目です。迷ったら、その費用が「治すため」だったかで考えるとわかりやすいです。


高額療養費・保険金との関係(重要)

医療費控除でいちばん間違えやすいのが、ここです。

計算するとき、高額療養費や保険金で戻ってきたお金は、医療費から差し引く必要があります。

たとえば医療費が30万円かかっても、高額療養費で20万円戻ってきたなら、自己負担は実質10万円。
医療費控除の計算では、この10万円をもとにします。

戻ってきた分を差し引かずに申告すると、あとで税務署から指摘されることがあります。正直に、差し引いて計算するのが大切です。

医療費が高額になったときに使う「高額療養費制度」については、こちらでくわしく解説しています。

医療費が高額になったら?高額療養費制度のしくみと申請方法


確定申告のやり方

医療費控除は、年末調整では受けられません。
自分で確定申告をする必要があります。

おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 1年分(1月1日〜12月31日)の医療費の領収書を集める
  2. 「医療費控除の明細書」を作成する(領収書の合計をまとめる)
  3. 確定申告書を作成する(国税庁のサイトやe-Taxが便利)
  4. 申告期間(通常は翌年2月16日〜3月15日ごろ)に提出する

領収書は提出不要ですが、5年間の保管が必要です。捨てずにとっておいてください。

健康保険組合から届く「医療費のお知らせ」を使うと、明細書づくりがぐっと楽になります。


もうひとつの選択肢:セルフメディケーション税制

医療費が10万円に届かない人向けに、別の制度もあります。
「セルフメディケーション税制」です。

これは、ドラッグストアなどで対象の市販薬(スイッチOTC医薬品)を買った金額が対象になる制度です。

年間の対象医薬品の購入額が12,000円を超えた分が控除対象(上限88,000円)

ただし、通常の医療費控除とは、どちらか一方しか選べません(併用はできません)。
また、健康診断や予防接種など、健康のための取り組みをしている人が対象です。

医療費が多くかかった年は通常の医療費控除、市販薬の出費が多い年はこちら、と使い分けるとよいでしょう。


よくある質問(FAQ)

Q1. 家族の医療費も合算できますか?

はい。生計をともにする家族の医療費は、まとめて1人が申告できます。
ふつうは、いちばん所得の高い人がまとめて申告すると、戻る額が大きくなりやすいです。

Q2. 領収書は提出しないといけませんか?

提出は不要です。ただし、自宅で5年間保管する必要があります。

Q3. 共働きですが、どちらで申告すればいいですか?

原則、所得の高いほうで申告するほうが、税率が高いぶん戻る額が増えやすいです。

Q4. 市販の薬も対象になりますか?

治療のために買った薬であれば、通常の医療費控除の対象になります。予防目的のビタミン剤などは対象外です。

Q5. 高額療養費をもらった分はどうなりますか?

医療費から差し引いて計算します。戻ってきたお金は、自己負担に含めません。

Q6. 申告を忘れていた年の分は、もう無理ですか?

医療費控除は、5年前までさかのぼって申告できます(還付申告)。忘れていた年があれば、まだ間に合う場合があります。


まとめ:領収書を、捨てないことから始まる

医療費控除は、1年間の医療費が一定額を超えたとき、確定申告で税金が戻ってくる制度です。

押さえておきたいのは、次の3つです。

  1. 「10万円」は、所得が低い人は「総所得の5%」に下がる
  2. 高額療養費や保険金で戻った分は、差し引いて計算する
  3. 年末調整では受けられない。自分で確定申告する

まず最初の一歩は、医療費の領収書を捨てずにとっておくことです。
それだけで、年明けの申告がぐっと楽になります。

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なお、病気やケガで働けない間の生活費は「傷病手当金」で補えます。あわせて知っておくと安心です。

傷病手当金とは?金額・期間・条件をやさしく解説

出産を控えている場合は、50万円が支給される「出産育児一時金」もあります。

出産育児一時金とは?50万円の受け取り方を解説

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出典・参考

  • 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
  • 国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
  • 国税庁「No.1129 セルフメディケーション税制」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm

※本記事は2026年5月時点の情報です。税制は改正される場合があります。実際の申告にあたっては、国税庁の最新情報または税務署・税理士へご確認ください。

最終更新日:2026年5月30日