「受給者証の適用区分の欄が、空になっている」
「保険が変わった患者さん、この受給者証はもう使えないの?」

指定難病の受給者証をめぐって、2026年3月に静かな変更がありました。窓口の動作が変わったのに、気づかないまま入力している人は少なくないはずです。

この疑問に、3つの総合病院で医療事務10年以上、現在はフルリモートで算定業務をしている私がお答えしますね。

この記事でわかること
- 2026年3月から、受給者証の何がなくなったか
- 適用区分の記載がない受給者証で、特記事項に何を入れるか
- 保険が変わった患者さんの、その日の会計の考え方
- 適用区分と階層区分の違い(レセプトに載るのはどちらか)
- 更新の時期と、窓口で声をかけるタイミング

結論から言うと、2026年3月1日から、指定難病の受給者証に「保険者名」「記号及び番号」「適用区分」が印字されなくなりました。所得区分はオンライン資格確認などで確認する形に変わり、保険が変わっていても公費が使える扱いになっています。

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この記事を書いた人
ゆう|3つの総合病院で医療事務10年以上|元採用担当3年|現フルリモート医療事務|3児パパ

指定難病の受給者証、2026年3月に消えた3項目

まず、何がなくなったか。

厚生労働省の通知を受けて、2026年(令和8年)3月1日以降に交付される特定医療費(指定難病)受給者証から、次の3つの記載が廃止されました。

  1. 保険者名
  2. 記号及び番号
  3. 適用区分(高額療養費の所得区分)

理由は、オンライン資格確認の普及です。都道府県が保険者に所得区分を照会して受給者証に印字する、という手間そのものがなくなりました。

窓口で確認できる情報を、紙に固定しておく必要がなくなったわけですね。

出典:大阪市|指定医療機関の皆様へ(2026年8月24日確認)

しばらくは2種類が窓口に来ます

ここが実務でつまずくところ。

3月以降に発行されたものから順に切り替わるので、当面は記載ありと記載なしの2種類が混在します。

3月より前に交付された受給者証は、有効期間内はそのまま使えます。

つまり「適用区分が書いてある受給者証」と「書いていない受給者証」が、同じ日に窓口へ並ぶ状態。どちらが来ても迷わない形にしておくと、ここから先が楽になりますよ。

場面別|適用区分がない受給者証を出されたら

ここからが動き方です。

場面①|マイナ保険証が使える患者さん

カードリーダーに置いてもらえば、オンライン資格確認等システムから資格情報と限度額適用区分の情報まで取得できます。その区分をレセプトの特記事項へ。

受給者証の適用区分を見て入力する、という動作はもう使いません。

記載の有無にかかわらず、オンライン資格確認か限度額適用認定証で確認した区分を記載するのが3月以降の扱いです。

場面②|資格確認書を持ってきた患者さん

資格確認書を確認して、資格確認端末で保険者番号を入力すれば、資格情報を取り込めます。

ただしこの場合、限度額適用区分の情報については、毎回窓口で患者さんから同意をもらう必要があります

ここは省略できないところなので、声かけの型を決めておくと楽ですよ。

💬 「限度額の区分も一緒に確認してよろしいですか」

場面③|どうしても区分が確認できない時

オンライン資格確認が導入されていない、同意が得られない、認定証の提示もない。そんな時の決めごとが、厚生労働省のリーフレットに示されています。

患者さんの区分 使う適用区分 特記事項への記載
70歳未満 適用区分ウ 不要
70歳以上(現役並みを除く) 「一般」の扱い 必要
70歳以上で現役並みと確認できた場合 適用区分ア 必要

「一般」の中身は、加入している制度と負担割合で分かれます。後期高齢者医療で1割なら適用区分キ、2割なら適用区分カ、後期高齢者医療以外の70歳以上で2割なら適用区分エ。

なお、いちばん下の行は高齢受給者証などの提示によって現役並み所得者と確認できた場合という条件つきです。

確認できていないのにアを入れる、ではないので気をつけてくださいね。

出典:厚生労働省 健康・生活衛生局難病対策課 リーフレット(2026年8月24日確認)

保険が変わった患者さん|3月から会計は止めなくてよくなりました

ここが、今回いちばん大きい変更かもしれません。

以前は、受給者証に印字された保険情報と実際の保険が違うと、原則そのままでは使えませんでした。だから窓口では「先に受給者証を作り直してきてください」という案内が必要だったわけです。

3月以降は現物給付ができる、という案内が自治体から出ています。保険が変わっているからその日は主保険だけ、という会計にはなりません。

やることは2つ。

  1. オンライン資格確認などで今の保険情報を確認する
  2. その保険情報でレセプトを出す

利用した時点の保険情報が入っていないとレセプトが返戻になることがあるので、確認そのものは省けません。逆に言えば、確認ができていれば、その日のうちに公費を使った会計にできます。

「新しい受給者証を持ってきて」は、もう言わなくていい

3月以降に交付される受給者証には、そもそも保険の情報が入りません。古い保険情報が印字された従来のものを持って来られても、そのまま使えます。

伝えるとしたら、受給者証を作り直す話ではなく役所への届出のほうですね。保険情報の変更は法令で定められた届出事項なので、そこは今も必要なままです。

💬 「保険が変わったことは、お住まいの窓口にもお届けが必要です。受給者証はこのままお使いいただけます」

なお、保険が変わると自己負担の上限額が動くことがあります。上限額のもとになるのは、同じ健康保険に入っている世帯の市町村民税の額だからです。ただ、そこを見るのは届出を受けた自治体。

窓口で収入を聞き取る場面ではありません。

出典:横浜市|受給者証における保険情報等及び適用区分表示の廃止について(2026年8月24日確認)

取り扱いは自治体から医療機関向けにお知らせが出ています。最後の判断は勤務先のある都道府県の案内が優先なので、一度目を通しておくと確実です。

適用区分と階層区分の違い|見ている所得が別です

受給者証に並ぶ、よく似た2つの区分。ここを混同したまま入力している人は多いところ。

適用区分 階層区分
何の区分か 医療保険の高額療養費の所得区分 難病の自己負担上限額の区分
もとになる情報 加入している保険の側の情報 同じ保険に入る世帯の市町村民税額
書かれている場所 保険の内容の側 上限額の近く
区分の例 ア〜オ、カ、キ 低所得Ⅰ・Ⅱ/一般所得Ⅰ・Ⅱ/上位所得

どちらも所得に関係しますが、出どころが別です。片方は保険者が持っている所得、もう片方は市町村民税。そこを分けて見ると迷いにくくなりますよ。

適用区分のもとは、健康保険なら標準報酬月額、国保なら旧ただし書き所得など。保険の内容の側に印字されていたのは、そのためですね。

階層区分のほうは市町村民税(所得割)の課税額で決まります。ただし上限額そのものは、階層区分だけで決まるわけではありません

「高額かつ長期」や人工呼吸器等装着といった治療の状況でも変わります。

レセプトのどこに入るか|特記事項欄と、公費の負担金額欄

「どっちを入力するのが正しいの?」と迷う場面。答えは、両方。入る場所が違うだけですね。

  • 適用区分(所得区分) → レセプトの特記事項欄
  • 階層区分そのもの → レセプトには出てきません

階層区分が決めているのは上限額のほう。その上限額をもとに実際に徴収した自己負担額が、公費欄の負担金額に入ります。

厚生労働省の資料でも、特定医療費に係る公費欄の負担金額(自己負担額)については必ず記載すること、とされています。上限に達していてその日の負担がない場合は、公費欄の負担金額は0円。

出典:厚生労働省 健康・生活衛生局難病対策課「特定医療費に係る自己負担上限額管理票等の記載方法について」令和8年3月(2026年8月24日確認)

更新の時期|自治体ごとに受付期間が決まっています

有効期間は原則1年以内。

特別な事情がある時だけ、1年6か月を超えない範囲で定められます(難病情報センター・2026年8月24日確認)。

更新の受付期間は都道府県や市ごとに決まっていて、対象になる患者さんへ案内を郵送している自治体があります。実際の例を2つ。

自治体の例 有効期限 案内の送付 受付期間
岡山市 9月30日 5月22日 6月1日〜7月31日
兵庫県 10月31日 6月8日〜8月14日

「何か月前から」は一律ではありません。ただ、どの自治体にも共通しているのは、期限を過ぎると新規申請の扱いになるという点。

そうなると、受給者証を使えない期間ができることがあります。

窓口でできるのは、気づいた時のひとことだけ。それでも十分ですよ。

💬 「有効期限が近いようですが、更新のご案内は届いていますか」

実際に受け付けるのは自治体なので、その先はお任せする形で構いません。

よくある質問(FAQ)

Q. 3月より前に交付された受給者証は、もう使えないのですか?

有効期間内はそのまま使えます。適用区分が印字されているものと、印字されていないものが当面は混在する形です。

どちらの場合も、特記事項に入れる区分はオンライン資格確認などで確認したものになります。

Q. 適用区分の欄にアスタリスク(*)が入っているのは何ですか?

自治体によっては、廃止された欄に*を印字して交付しています。空欄と同じ扱いで、区分はオンライン資格確認などで確認します。

Q. 患者さんが「限度額の確認に同意しない」と言った場合は?

同意が得られない場合は、区分が確認できない時の決めごとに従います。70歳未満なら適用区分ウで特記事項の記載は不要、70歳以上なら「一般」の扱いで記載が必要です。

Q. 保険が変わったのに、患者さんが役所へ届け出ていない場合は?

その日の会計は、確認できた保険情報で進められます。届出はしてもらう必要があるので、案内だけ添える形になります。

Q. 階層区分が変わると、いつから上限額が変わりますか?

自治体の案内では、申請日の属する月の翌月から(申請日が1日であればその月から)とされている例があります。詳しくは、勤務先のある自治体の案内で確認してください。

Q. 薬局でも同じ扱いですか?

指定医療機関に薬局も含まれるので、考え方は同じです。自己負担上限額管理票への記入も、これまでどおり続きます。

Q. 高額療養費の上限額そのものは、2026年8月に変わりましたか?

月額の上限が引き上げられ、年間の上限が新しく設けられました。所得区分の細分化は2027年8月からです。詳しくは関連記事に。

まとめ

  1. 2026年3月1日から、受給者証の「保険者名」「記号及び番号」「適用区分」が印字されなくなりました。当面は記載あり・なしの2種類が混在します
  2. 特記事項に入れるのは、オンライン資格確認か限度額適用認定証で確認した区分。受給者証の適用区分を見て入れる動作は、もう使いません
  3. 保険が変わっていても、その日の会計は止めなくてよくなりました。伝えるのは受給者証の作り直しではなく、役所への届出のほうです

制度が変わったこと自体より、変わったのに現場の心配が古いままになっているほうが厄介です。この記事が、その差を埋める材料になればうれしいです。

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■ 著者プロフィール
3つの総合病院で医療事務を10年以上務め、うち1つの病院で元採用担当を3年経験しました。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信中。

最終更新日:2026年8月24日