「受付で患者さんに怒鳴られて、頭が真っ白になった」
「すぐ謝ったのに、なぜか余計に怒らせてしまった」
「クレームが怖くて、毎朝仕事に行くのがつらい」
こんな経験のある医療事務の方に向けて書きます。
✅ 医療事務の受付でクレームが多い「本当の理由」(個人のせいではない)
✅ やりがちな「NG対応」3つ(知らないままだと悪化させる)
✅ 受付10年が実践するクレーム対応3ステップ(具体的なフレーズ付き)
✅ 怒鳴られた後に自分を責めないためのメンタルの整え方
✅ クレームが多い職場に限界を感じたときの考え方
結論から言うと、クレーム対応には「型」があります。
怒鳴られた瞬間に正しい型で動けると、状況はほぼ必ず落ち着いてきます。そして怒鳴られる原因のほとんどは「あなたのミス」ではなく「病院という場所の構造」にあります。
この記事では、私が総合病院10年で学んできたことを正直に書きます。
この記事を書いた人
ゆう|医療事務10年・採用担当3年(100人以上面接)・現フルリモート
総合病院で10年間、受付・会計・マネジメントを経験。採用担当として100名以上の面接も担当。現在はフルリモートで算定業務に携わりながら、医療事務で悩む方へ向けて発信しています。
なぜ医療事務の受付にクレームが集まるのか
クレームが多い理由を一言で言うと「不安が集まる場所だから」です。
病院に来る患者さんは、体の不調や病気への心配を抱えています。
検査結果が怖い。家族の病状が心配。痛みが続いている。そういう「不安」を抱えたまま、慣れない手続きや長い待ち時間に向き合っています。
その積み重なったストレスが、受付の窓口でたまたまはけてしまう。
怒鳴りたくて来ているのではなく、怒鳴らずにいられない状態になっている、ということです。
「待ち時間」だけが原因ではない
クレームのきっかけとして多いのは待ち時間ですが、実際には待ち時間そのものより「どれくらい待つかわからない」という不確実性が問題になることが多いです。
| クレームが起きやすい状況 | 患者さんの心理 |
|---|---|
| 待ち時間が長い(目安が伝えられていない) | 「あとどれくらい待てばいい?」という不安 |
| 手続きの理由が説明されていない | 「なぜこんなことを聞かれるの?」という疑問 |
| 複数窓口をたらい回しにされた | 「責任者は誰?」という不信感 |
| 以前と対応が違うと感じた | 「いつも違う、信用できない」という不満 |
| 体調が優れないのに立たされる | 「配慮がない」という失望 |
この表を見るとわかるように、多くのクレームは「情報不足」と「期待のズレ」から起きています。
医療事務側の大きなミスが原因というより、病院のシステムや環境に起因することがほとんどです。
クレームが多い職場は「個人の力で変えられない構造」になっている
長年現場にいて気づいたことがあります。
クレームが多い職場には共通点があります。人手不足、待ち時間の案内が不十分、窓口ルールが統一されていない。これらは一受付担当者の力でどうにかなるものではありません。
「自分の対応さえよければ」と思いがちですが、構造的な問題が原因のクレームは、どれだけ完璧に動いても起きてしまいます。
これは、あなたのせいではないのです。
怒鳴られたときにやりがちな「NG対応」3つ
実際に怒鳴られたときの話をします。
多くの医療事務が無意識にやってしまう対応があります。悪意はないのですが、これをやると状況が悪化しやすくなります。
NG① すぐに謝って説明しようとする
「申し訳ありません」とすぐに謝り、続けて「しかし、こちらの手続きでは……」と説明しようとする。
これが最もやりがちで、最もリスクの高い対応です。
感情がピークに達している状態の人に「論理的な説明」を入れると、「なんで言い訳するんだ」と受け取られてしまいます。
怒りのピークにいるとき、人は「聞きたい」状態にいません。「吐き出したい」状態にあります。その状態で説明を入れると、火に油を注ぐ形になります。
謝罪は必要ですが、タイミングが全てです。
NG② カウンター越しのまま話し続ける
受付カウンター越しの状態は、無意識に「対立構造」を作ります。
カウンターをはさんで向かい合っていると、周りの患者さんの視線が集まりやすくなります。
怒鳴っている患者さんも、周りに見られていることで感情が高まってしまうことがあります。「見られている」という緊張感が、さらなる言葉に火をつけることがあるのです。
NG③ 「自分でなんとかしなければ」と一人で対応し続ける
新人のうちはとくに「引き継ぐのは失敗」と感じてしまいがちです。
でも実は、これが最も状況を長引かせる原因になります。
一人で対応しているときに行き詰まると、沈黙や言葉を探す時間が生まれます。その時間が、患者さんには「この人は対応できない」と映ることがあります。
複数人で対応することが、クレームを早く解決する最善手です。
受付10年が実践するクレーム対応3ステップ
NG対応を踏まえた上で、実際に使える3ステップを解説します。
これは私が総合病院10年の経験の中で、少しずつ身につけてきた方法です。
STEP 1:まず「聞く」だけに徹する(目安2〜3分)
怒鳴られたら、最初の2〜3分は「聞くだけ」に徹します。
相槌は「はい」「そうでしたか」「おっしゃる通りです」だけで十分です。余計な言葉を足さず、ひたすら「聞いている」という姿勢を見せます。
人間の怒りのピークは、だいたい2〜3分です。それを過ぎると、少しずつ落ち着いてきます。
感情が落ち着いてきてから「大変なご迷惑をおかけいたしました」と一言だけ謝罪を入れると、話が通じやすい状態になっています。
| タイミング | やること | 使う言葉の例 |
|---|---|---|
| 怒鳴られ始め(0〜1分) | 聞く・相槌を打つ | 「はい」「そうでしたか」 |
| ピーク中(1〜3分) | 聞き続ける・うなずく | 「おっしゃる通りです」 |
| 落ち着き始め(3〜5分) | 謝罪を入れる | 「大変ご不便をおかけしました」 |
| 落ち着いた(5分〜) | 説明・提案に移る | 「こちらで確認いたします」 |
STEP 2:場所を変える
「少し静かな場所でお話しさせてください」
この一言が、状況をリセットする最強のフレーズだと思っています。
場所を移動することで、周りの視線から離れます。患者さんも「一歩引く」ことができます。歩くという動作自体に、気持ちをリセットする効果があると後から先輩に教わりました。
カウンター脇の少し奥まったスペースでも十分です。「少し場所を変えましょうか」という動作が、状況の転換点になることが多いです。
ただし、密室に二人きりになることは避けてください。先輩や同僚が見える場所に移動することが大前提です。
STEP 3:一人で抱えない、チームで対応する
目線を送る。それだけで大丈夫です。
対応中に近くにいる先輩や同僚に視線を送ると、経験のある人が気づいて近づいてきてくれます。引き継ぎは失敗ではありません。複数人でのチーム対応が、クレームを最短で解決する正しい形です。
もし声に出せる場合は「少々お待ちいただけますか」と一言添えて、先輩を呼びにいくことも正解です。
クレーム対応で使えるフレーズ集
実際に使えるフレーズをまとめます。
場面別に覚えておくと、頭が真っ白になった瞬間でも体が動きます。
| 場面 | 使えるフレーズ |
|---|---|
| 怒鳴られ始めた瞬間 | 「おっしゃっていることは、しっかりうかがっています」 |
| 相手が話し終わったとき | 「大変なご不便をおかけいたしました」 |
| 説明に移るとき | 「少し詳しくご説明させていただいてもよろしいでしょうか」 |
| 場所を変えるとき | 「少し静かな場所でお話しさせてください」 |
| 先輩に引き継ぐとき | 「担当の者と一緒にご対応させていただきます」 |
| 確認に時間がかかるとき | 「少々お時間をいただけますでしょうか。必ずご連絡いたします」 |
| お見送りするとき | 「お体に気をつけてお帰りください」 |
「謝罪ばかりでいいの?」と思う方もいると思います。
クレーム対応でよく言われる「共感する」という言葉も大切ですが、感情的な場面ではまず「聞いている」「向き合っている」という姿勢を示すことが先決です。
長い言葉より短いフレーズの方が、熱量のある場面では伝わりやすいです。
知っておきたい「よくある勘違い」
クレーム対応について、現場でよく見られる誤解をまとめます。
| 勘違い | 実際のところ |
|---|---|
| すぐ謝れば解決する | タイミングが合わないと逆効果になることがある |
| 一人でなんとかするのがプロ | チーム対応が正しい形。引き継ぎは失敗ではない |
| クレーム対応に慣れれば怖くなくなる | 慣れても怖い。怖いまま動けるようになるのが正解 |
| 完璧な対応ができれば怒鳴られなくなる | 構造問題のクレームはどれだけ完璧でも起きる |
| クレームが多い職場は自分が悪い | 職場環境の問題である場合が多い |
「クレームに慣れれば怖くなくなる」という言葉を耳にすることがありますが、私の経験では少し違います。
10年経っても、怒鳴られると心臓はバクバクします。
ただ「型」があると、怖いまま動けるようになります。怖くなくなることを目指すより、「怖くても行動できる」を目指す方が現実的です。
怒鳴られた後に自分を責めないための考え方
怒鳴られた日の帰り道、ぐるぐると考え続けることがあります。
「もっとうまく言えたのではないか」「自分の何かが悪かったのではないか」
この気持ちはとても自然なものです。でも、考え続けることが必ずしも次に生かされるわけではありません。
「怒鳴られたあなた」が悪かったわけではない
先ほど書いたように、クレームの多くは構造的な問題が原因です。
でもそれだけではありません。
病院に来る患者さんは、体の不調や不安を抱えています。「待たされたこと」が引き金になったとしても、その奥には「病院に来なければならない状況への怒り」があることが多い。
あなたは、その怒りの出口になっただけかもしれません。
私が2年目のとき、はじめて本気で怒鳴られた日の夜、先輩から一言もらいました。
「それ、ゆうのせいじゃないよ」
その言葉が、今でも残っています。
「反省」と「自責」は違う
怒鳴られた経験を次に生かすために振り返ることは大切です。
でも「あのとき自分がもっと完璧だったら」という自責には、際限がありません。
振り返るときは「次回、どの瞬間に別の行動ができたか」を1点だけ考えます。1点だけでいいです。
それを翌日の対応に少し取り入れる。それだけで十分です。
完璧な対応なんて、10年経験したベテランでもできない場面があります。
「今日も受付に立てた」で十分
クレームがあった日でも、他の患者さんへの対応はできていたはずです。
「今日、受付で10人の対応ができた。1人に怒鳴られたけど、9人の対応はできた」
そう考えてみてください。
怒鳴られた1件だけを一日の評価にしないことが、長く働き続けるために大切です。
クレームが多い職場に限界を感じたら
ここまで読んでいただいた方の中には、「毎日のようにクレームがある職場にいる」という方もいると思います。
クレームが多い職場には、大きく2つのパターンがあります。
| パターン | 主な原因 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| 対応スキルの問題 | まだ慣れていない・型がない | 今回の3ステップを実践する |
| 職場構造の問題 | 人手不足・ルール未整備・説明不足 | 上長への提案、または転職を検討 |
スキルの問題は、この記事で紹介した方法で少しずつ改善できます。
でも、職場の構造的な問題は、一担当者の力でどうにかなるものではありません。
毎日怒鳴られるような職場で働き続けることは、精神的に消耗します。それは医療事務という仕事が向いていないのではなく、その職場の環境が問題である可能性があります。
「もし今の職場以外の選択肢があったら」と考え始めたとき、転職サービスを使って情報収集するだけでも視野が広がります。
私も転職サービスを使ってフルリモートの職場に出会いました。動く前に「今の職場より条件が良い求人があるかどうか確認する」だけでも、気持ちが少し楽になることがあります。
医療事務に特化した転職サービスについては、別記事でまとめています。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| クレームの原因 | 多くは患者さんの「不安」と病院の「構造問題」。個人のせいではない |
| NG行動3つ | ①すぐ謝って説明 ②カウンター越しのまま ③一人で抱え込む |
| 対応3ステップ | ①2〜3分聞くだけに徹する ②場所を変える ③チームに引き継ぐ |
| メンタルケア | 反省と自責を区別する。1点だけ改善策を考えれば十分 |
| 限界を感じたら | 職場構造の問題なら転職も正しい選択肢 |
クレーム対応の上手な人は、感情が動じないのではなく「型」を持っているから冷静に動けます。
怒鳴られることに慣れる必要はありません。「こう動けばいい」という型を体に覚えさせることが、長く医療事務を続けるための一つの方法です。
よくある質問(FAQ)
Q1:怒鳴られているとき、涙が出そうになります。どうすればいいですか?
感情が揺れることは自然なことです。その場では深呼吸をしながら相槌を打つことに集中してください。感情のコントロールは時間と経験が必要で、すぐに慣れるものではありません。事前に先輩へ「怒鳴られると涙が出そうになる」と話しておくだけで、フォローに入ってもらいやすくなります。
Q2:他の患者さんが見ている場面でのクレーム、どう対応すればいいですか?
早めに「場所を変える」動作をしましょう。カウンター越しの対応を続けると、周囲の視線が患者さんの感情を高める場合があります。「少し静かな場所でお話しさせてください」と声をかけて移動することが、周囲への影響を最小化する最善手です。
Q3:謝罪してはいけないのですか?
謝罪自体は必要です。ただし「タイミング」が重要です。感情のピーク中に謝罪や説明を入れると逆効果になることがあります。相手が少し落ち着いてきてから「大変なご不便をおかけしました」と入れるのが効果的です。
Q4:先輩を呼ぶタイミングがわかりません。
「自分では対応できないと感じた瞬間」が呼ぶタイミングです。5分経っても状況が落ち着かない場合や、怒鳴り声が大きくなっている場合は迷わず先輩を呼んでください。引き継ぎを「失敗」と思う必要はありません。それがチーム対応の正しい形です。
Q5:クレームのあった日は引きずってしまいます。どうすればいいですか?
引きずること自体は自然です。対処法として「次回この場面でどう動けばよかったか」を1点だけ考えて、メモするとよいです。それ以上は考えない。振り返りを1点に限定することで、反省が自責に変わるのを防げます。
Q6:「怒鳴る患者さんが怖い」という気持ちが消えません。
怒鳴られることに慣れる必要はありません。怖いと感じることは正常な感覚です。「型」を覚えることで、怖いまま行動できるようになります。怖くなくなることを目指すより「怖くても動ける」を目指す方が現実的です。
Q7:毎日クレームがあって、仕事が嫌になっています。転職すべきですか?
毎日クレームがある状態は、個人スキルの問題よりも職場環境の問題である可能性があります。転職をいきなり決める必要はありませんが、一度転職サービスで「今の職場以外の選択肢」を確認してみることをおすすめします。選択肢があることを知るだけで、今の職場での心の余裕が生まれることがあります。
■ 著者プロフィール
総合病院で医療事務10年、うち3年間は採用担当として100名以上を面接。受付・会計・マネジメントを経験し、クレーム対応に関しては数え切れないほどの経験を積んできました。現在はフルリモートで算定業務をしながら、3人の子どもを持つ父として働いています。「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるために発信中。
- note:もうひとりで悩まない医療事務
- X:@Yuuiryounimu
最終更新日:2026年4月22日
